経済小説イチケンブログ

経済小説案内人が切り開く経済小説の世界

2021-07-01から1ヶ月間の記事一覧

『雨の日は、一回休み』 - 世代間ギャップと女性との距離感に悩むおじさんたち

人は皆、人生の折り返し点を過ぎ、いわゆる「中高年」と称される年代になると、体力の衰えを感じたり、老いを意識したりすることが増えてきます。老後に向けて生活費を円滑にねん出することができるかどうかという、経済的な不安も、頭の中にこびりつき、離…

『ひまりの一打』 - プレイヤーとキャディというタッグを通して

「アスリートを扱った作品」の第三弾は、半田畔『ひまりの一打』(集英社文庫、2021年)。プロゴルファー・中原ひまりのゴルフに対する考え方・思い入れを軸に、女子プロの世界、コーチ・キャディというタッグのあり方、スポンサーとの関係、ライバルとの駆…

『ゲームセットにはまだ早い』 - 野球のクラブチームの実態! 

「アスリートを扱った作品」の第二弾は、須賀しのぶ『ゲームセットにはまだ早い』(幻冬舎文庫、2017年)です。新潟県で町おこしの一環として創設されたばかりのクラブチーム「三香田ヴィクトリー」が舞台。チームを構成する監督・キャプテン・選手・マネー…

『独走』 - 「金メダル倍増計画」が問いかける! 

まもなく開会式を迎える東京オリンピック。世界中のトップアスリ-トが集うこの大会は、本来ならば、世界中の多くの人々の関心と声援の的になるはずのものでした。ところが、コロナ禍の影響で、なんとなく盛り上がりに欠けています。戸惑いを感じている方も…

『ニュータウンは黄昏れて』 - 建て替え・修復から再生・活性化へ

「マイホームを扱った作品」の第三弾は、垣谷美雨『ニュータウンは黄昏れて』(新潮文庫、2013年)。東京郊外のニュータウンに住むある家族の苦境・現状からの脱却を軸に、建物の建て替え・修復、さらにはニュータウンという地域の再生・活性化に関わる問題…

『亀裂-老朽化マンション戦記』 - 建て替えか、それともこまめな補修か

「マイホームを扱った作品」の第二弾は、江波戸哲夫『亀裂-老朽化マンション戦記』(光文社文庫、2004年)です。マンションの建て替えをめぐって展開される、賛成・反対という住民同士の軋轢・利害対立だけではなく、建て替えを新規建設に匹敵する重要なマ…

『家路の果て』 - マイホームの夢と現実

「人生最大のお買いもの」。その言葉を聞いて、多くの人が想定するのは、マイホームではないでしょうか? 「一戸建てか、マンションか」の選択、資金の調達、業者選びから始まって、価格・場所・部屋の構成、周辺の環境や利便性など、買おうと思いたってから…

『できない男』 - 「できない」という自信のなさからの脱出! 

「『ダメな男』を扱った作品」の第二弾は、額賀澪『できない男』(集英社、2020年)です。同じくデザイン業界で働くふたりのアラサーの「できない男」の交流と成長の物語。恋愛経験がなく、仕事もさえない芳野荘介。他方、仕事は有能でも、本気で恋愛に踏み…

『被取締役新入社員』 - 新入社員は正真正銘の「ダメ男」! 

小説の主人公としては、多くの場合、特定の領域で秀でた力を発揮する、与えられたことと精いっぱい向き合う、新しいことに挑んでみるような人物像が想定されるのではないでしょうか。もちろん、なにをやらせてもうまくいかない「ダメな人間」「できない人間…