経済小説イチケンブログ

経済小説案内人が切り開く経済小説の世界

2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧

『ある日、アヒルバス』 - ごく普通のバスガイドの「愛すべきお仕事」

「旅行・観光を扱った作品」の第二弾は、バスガイドの日常的な仕事をユーモアたっぷりに描写した、山本幸久『ある日、アヒルバス』(実業之日本社文庫、2010年)です。観光バスに乗る客に対するバスガイドの心がけや心の動きが浮き彫りにされています。2015…

『ツアコン!』 - 「いつだって、真心こめたおもてなし」の大変さ

7月も下旬になると、夏休みの過ごし方が話題になることが増えてくるのではないでしょうか。旅行の準備はすでに終えている人が多いかもしれません。とはいえ、新聞・雑誌・ネット上は、夏休みやお盆休みを利用した旅行プランの広告で賑わっています。そして、…

『ルーズヴェルト・ゲーム』 - 「8対7という大逆転劇」! 

「企業スポーツを扱った作品」の第二弾は、第一弾と同様に池井戸潤の作品で、『ルーズヴェルト・ゲーム』(講談社、2012年)です。リーマンショックに伴う不況の最中、多くの企業が自社の企業スポーツチームを続々と休廃部するという事態が生じました。この…

『ノーサイド・ゲーム』 - GMはラグビーの素人、でも「経営戦略のプロ」だった

企業が特定のスポーツを支援する理由は、そのスポーツの実力向上、従業員の士気高揚、企業イメージの向上や知名度アップといった広報効果、社会貢献など、多様です。しかし、企業の業績は、企業内外のさまざまな要因によって浮き沈みを伴います。その結果、…

『当確師』 - 当選確率99%を誇ってきた辣腕選挙コンサルタント

「選挙請負人を扱った作品」の第二弾は、真山仁『当確師』(中央公論新社、2015年)です。当選確率99%を誇ってきた辣腕選挙コンサルタントの名前は聖達磨。選挙コンサルタントが選挙期間中に介入してアドバイス料を受け取った瞬間、公職選挙法違反で逮捕さ…

『当選請負人』 - 候補者だけでは戦えないという「無数のワケ」

7月4日、第25回参議院選挙が公示されました。21日の投開票に向けて、激しい選挙戦が行われています。そうした選挙戦でなくてはならない存在になっているお仕事があります。それは、選挙当選請負人、選挙プランナー、選挙コンサルタントなどと称されているも…

『任侠病院』 - ヤクザが病院を再建する?!

「病院を扱った作品」の第四弾は、今野敏『任侠病院』(実業之日本社、2011年)です。ヤクザの阿岐本組が崩壊寸前の組織を再建するというユニークな「任侠シリーズ」。その一作目の『任侠書房』では出版社、二作目の『任侠学園』では私立高校、そして、三作…

『極北クレイマー』 - 地方病院におけるもうひとつの「医療崩壊」

「病院を扱った作品」の第三弾は、海堂尊『極北クレイマー』(朝日新聞出版、2009年)です。観光誘致に失敗し、財政破たんにあえぐ、北海道・極北市(人口10万人)。その市立病院を舞台に、「医療崩壊」の実情と再生への模索を描いています。 [おもしろさ] …

『限界病院』 - 地方病院における「医療現場」の危うさ

「病院を扱った作品」の第二弾は、久間十義『限界病院』(新潮社、2019年)です。深刻な財政危機に陥っている地方都市の市立病院の再生への模索とそれを阻む動きが追求されています。 [おもしろさ] 地方病院の「窮状」と「改革」 本書のユニークさは、ズバリ…