経済小説イチケンブログ

経済小説案内人が切り開く経済小説の世界

2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

『ジバク』 - 「人生の勝ち組」から「どん底」への転落

「転落を扱った作品」の第二弾は、山田宗樹『ジバク』(幻冬舎、2008年)です。優秀なファンドマネージャーであった主人公が、高校時代のクラス会で憧れていた女性と再会したことを契機に、「転落人生」を転げ落ちていくことになります。地獄のどん底まで落…

『東京難民』 - 転落人生のプロセスと結末

同じことの繰り返しで過ぎていく平穏な毎日。長く続けていると、そのありがたさは見失われてしまいがちに……。そのようなとき、誰しもが経験するかもしれない人生の転落ぶりを描いた小説を読めば、どのような感想を持つでしょうか? 今回は、あることを契機に…

『ブルーベリー作戦成功す』 - 新薬開発に伴う特許戦争

「知的財産を扱った作品」の第三弾は、池上敏也『ブルーベリー作戦成功す』(幻冬舎、2014年)です。特許戦争の全貌を書き記した本書は、特許出願中の抗生物質の販売停止を強く要請する「警告書」から始まる壮大な物語です。敵対する巨大な多国籍企業に特許…

『ロボジョ!』 - 知財ビジネスの基本! 

「知的財産を扱った作品」の第二弾は、稲穂健市『ロボジョ! 杉本麻衣のパテント・ウォーズ』(楽工社、2020年)です。大学生の主人公が開発したロボットやそれに搭載する技術の開発状況、その活用方法、成果物をめぐる争奪戦が描写。巻末に「知的財産権 入…

『それってパクリじゃないですか?』 - 知財関連で働く人へのお助け本! 

アメリカにおいて、知的所有権(発明やデザインなど、精神的創作努力の成果としての知的成果物を保護する権利の総称)の保護戦略が本格的に進められる契機になったのは、レーガン政権下の1985年1月に出された「ヤング・レポート」と考えられています。そこで…

『ほどなく、お別れです』 - 葬儀社という仕事の真髄と、葬式の本質

「『生と死』を扱った作品」の第二弾は、長月天音『ほどなく、お別れです』(小学館、2018年)です。清水美空には、美鳥という姉がいました。生まれる前に先立ってしまったのですが、夢の中では「幼い姿の姉」と何度も遭遇。そして、彼女によって守られてい…

『むかえびと』 - 新しい命を迎える助産師というお仕事

かつて梓みちよさんが歌ったヒット曲『こんにちは赤ちゃん』。「こんにちは赤ちゃん あなたの笑顔…… あなたの泣き声 その小さな手 つぶらな瞳 はじめまして わたしがママよ……」。思わずハミングしてみたくなる永六輔さんの歌詞。生まれてきた新しい命に対す…

『55歳からのハローライフ』 - 人生の折り返し点からの「再出発」

「中高年を扱った作品」の第三弾は、村上龍『55歳からのハローライフ』(幻冬舎、2012年)。①離婚した女性58歳の婚活、②出版社をリストラされたあと、アルバイトでなんとか生計を維持している58歳の男性、③早期退職に応募し、キャンピングカーで全国を旅する…

『早期退職』 - 「リストラ」を促された中高年社員の悩みと不安

「中高年を扱った作品」の第二弾は、荒木源『早期退職』(角川文庫、2018年)です。働く中高年男性社員の悩み事は、『雨の日は、一回休み』で扱われたような若手社員や女性社員との距離感をどのようにとっていくのかという点に関わることだけではありません…