経済小説イチケンブログ

経済小説案内人が切り開く経済小説の世界

2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

『空の城』 - 堅実商法であったはずの安宅産業がなぜ破綻したのか? 

「商社を扱った作品」の第二弾は、松本清張『空の城』(文春文庫、1982年)です。1904年に安宅弥吉が創設。官営八幡製鉄の指定商社として、国内の鉄鋼市場に強力な地盤を築き上げた安宅産業。しかし、NRC(ニューファンドランド・リファイニング・カンパニー…

『不毛地帯』 - 商社もまた時代の流れとともに変化していく

就職ランキングで上位を占めている業界のひとつに商社があります。高給取り、海外勤務、ブランド力などが、人気の理由になっているようです。とはいえ、多くの就活生のイメージは、「ラーメンからミサイルまで」と多彩な商品を扱うことや、商社ビジネスの基…

【編集・解説】 『明日はきっと』

2022年1月21日、角川文庫から『明日はきっと-お仕事小説アンソロジー』が出版されました。収録されている作品は、新野剛志さんの「笑って、笑って」、沢村凛さんの「部下の迷い」、宮木あや子さんの「校閲ガール!?」、久保寺健彦さんの「仕事の仕事」、坂木…

『ザ・ロイヤル・ファミリー』 - 「親子二代」にわたる馬主同士の「対決・交流」

「競馬を扱った作品」の第二弾は、早見和真『ザ・ロイヤル・ファミリー』(新潮社、2019年)です。先に紹介した古内一絵『風の向こうに駆け抜けろ』では、主に旗手・厩務員に焦点が当てられていました。それに対して、この作品では、「馬主の秘書(マネージ…

『風の向こうに駆け抜けろ』 - 馬・旗手・調教師・厩務員・馬主が織りなす世界

「いけぇええええええ!」 瑞穂が叫ぶ。最後の直線に入る。伸びる、伸びる、伸びる! まるで空を滑走しているようだ。これだ。この感覚だ……。全身が総毛立ち、狂おしいほどに、激情が込み上げる……。完全に溶け合い、ひとつの翼となった旗手の瑞穂と馬のフィ…

『地中の星』 - 文明国にしかありえなかった地下鉄を東京に! 

「江戸・東京はじめて物語」の第四弾は、門井慶喜『地中の星』(新潮社、2020年)です。東京に地下鉄を誕生させるという前代未聞の偉業を達成した早川徳次と、工事現場で彼をサポートした大倉土木の総監督・現場監督たちの熱い物語。東京初の地下鉄が同時代…

『東京、はじまる』 - 江戸を壊し、東京を建てる! 

「江戸・東京はじめて物語」の第三弾は、門井慶喜『東京、はじまる』(文藝春秋、2020年)です。日本人初の建築家となり、日本銀行本店、両国国技館、東京米穀取引所、東京駅などを設計。いわば「東京そのものを建築する」という使命を負わされた辰野金吾の…

『江戸を造った男』 - 材木商の河村屋七衛の艱難辛苦・波瀾万丈

「江戸・東京はじめて物語」の第二弾は、伊東潤『江戸を造った男』(朝日新聞出版、2016年)です。前回(1月4日)のブログで取り上げた門井慶喜『家康、江戸を建てる』では、江戸のインフラとして、治水、貨幣、飲料水、江戸城の石垣、天守の建造が整備され…

『家康、江戸を建てる』 - 「江戸・東京はじめて物語」! 

1590年夏、小田原城攻めの陣中、豊臣秀吉は、徳川家康に次のような主旨のことを告げたそうです。この戦が済み次第、「北条家の旧領である関東八か国をそっくりさしあげよう。合わせて240万石。天下一の広大な土地じゃ。お受けなされい」。しかし、その代わり…

2022年新春

皆さん、明けましておめでとうございます。 おもしろい経済小説やお仕事小説を紹介する「経済小説イチケンブログ」。来る2月で、4年目に突入することとなります。アクセスしてくださって、誠にありがとうございます。今年も、ベストを尽くしたいと思っており…