経済小説イチケンブログ

経済小説案内人が切り開く経済小説の世界

作品紹介-5年目

『家政夫くんは名探偵!』 - 家事代行会社で働く美男子の探偵ぶりと仕事ぶり

「家事代行を扱った作品」の第二弾は、楠谷佑『家政夫くんは名探偵!』(マイナビ出版ファン文庫、2018年)。家事代行会社で働いている三上光弥。おどろくほど推察力に優れています。刑事の連城怜の家で仕事をしているとき、彼の抱えている事件の真相を言い…

『主婦やめます!』 - 家事代行業の円滑な運営には

共働きの一般化、人口の高齢化、単身者の増加などに伴い、掃除・洗濯・食事の提供・買い物などの家事を代行業者に委託することがごく普通に行われるようになってきています。時間的、身体的に家事を行うことが難しい人にとっては、非常に便利なサービスです…

『お局美智 経理女子の特命調査』 - 極意の情報を知り尽くして会社を守る

「経理を扱った作品」の第三弾は、明日乃『お局美智 経理女子の特命調査』(文春文庫、2020年)。終戦直後に先々代の野村千代作が創業し、先代の作太郎が育て、三代目の勇作が社長を務めている同族会社のNOMURA建設(従業員150名)。そこで経理の仕事をしな…

『やってられない月曜日』 - 仕事に新鮮味を感じなくなったOLがやる気を取り戻す

「経理を扱った作品」の第二弾は、柴田よしき『やってられない月曜日』(新潮社、2007年)。会社に入って何年か経ち、仕事にも慣れてくると、新鮮味がなくなってくるのは、世の常。単調な出来事の繰り返しのなかで、常にモチベーションをもって仕事に接し続…

『これは経費で落ちません!』 - 経理から見る社内の人間模様

経理の仕事は、一言で表現すれば、会社のお金を管理すること。経営者が経営判断をするために必要な決算書の作成のほか、現金の出納管理、経費の精算、伝票の記帳・整理、売掛金・買掛金の管理、従業員の給与や社会保険料の計算など、非常に幅広い業務をカヴ…

『マイ・ディア・ポリスマン』 - 交番に勤務する巡査の日常

「交番を扱った作品」の第三弾は、小路幸也『マイ・ディア・ポリスマン』(祥伝社文庫、2020年)。架空の町・奈々川市坂見町にある東楽観寺前交番に赴任して2カ月が経過したお巡りさん(ポリスマン)の宇田巡。同寺の跡取り息子で副住職でもある大村行成。小…

『新任巡査 下巻』 - 優秀な女性巡査を苦しめてきた過去の秘密

「交番を扱った作品」の第二弾は、古野まほろ『新任巡査』下巻(新潮文庫、2016年)。上巻からの延長で、新任巡査が交番勤務を行う際の様子や指導役となる上司との絡みが詳しく、かつ具体的に解説されています。ただ、上巻の主人公である上原頼音は、誠実で…

『新任巡査 上巻』 - ホンネで綴られる巡査の職務と心構え

警察の機能には、行政警察活動(犯罪の予防や治安の維持など)、司法警察活動(すでに起こった犯罪の捜査や犯人逮捕など)、公安警察活動(反政府活動・暴動の調査や警戒、防諜など)の三つがあると言われています。なかでも、非日常的な驚きの要素がたくさ…

『道をたずねる』 - 日本に住宅地図を普及させる! 

「はじめて物語」の第三弾は、平岡陽明『道をたずねる』(小学館、2021年)。別府で、天沢永伍が興した地図会社「キョーリン」。設立7年目、社員は20名たらずで、零細企業の域を出ていない状態でした。が、創業社長には、「いつの日か、日本の全建物と全氏名…

『繭と絆』 - 「日本初の工女・尾高勇」の物語

「はじめて物語」の第二弾は、植松三十里『繭と絆 富岡製糸場ものがたり』(文春文庫、2019年)。富岡製糸場は、日本で最初に蒸気機関を使った大規模で、近代的な国営の製糸工場として知られています。フランス人のお雇い外国人を指導者に招いて建設されまし…

『「横浜」をつくった男』 - 高島嘉右衛門の波乱万丈

新しい年を迎えるとき、毎年、それまでにはなかった新しいことを見つけてみたいとか、なにかにチャレンジしてみたいとか、そんな気持ちにさせられます。ところが、同じような日常が繰り返されていく過程で、いつのまにか、そのような気持ちは徐々に萎えてい…

『洗濯屋三十次郎』 - どこまでも不器用な男が感じ、行ったこと

「職人を扱った作品」の第三弾は、野中ともそ『洗濯屋三十次郎』(光文社文庫、2021年)。大手の取次チェーンではない、個人経営の小さなクリーニング店「中島クリーニング」。その店長になったのは、地味で、不器用で、自分からは動こうとしない、クリーニ…

『虹にすわる』 - 椅子づくりと格闘する職人ふたり

「職人を扱った作品」の第二弾は、瀧羽麻子『虹にすわる』(幻冬舎文庫、2022年)。「真面目一筋で、細かいことにも目が届き、木工技術には光るものを持っている徳井律」と「真面目とは言いにくいものの、独創的なデザイン力を有している魚住光」。対照的な…

『削り屋』- 職人たちが織りなす「奥深い世界」

「職人気質」という言葉があります。「自分の腕に絶対的な自信を持ち、頑固で実直な気質」を意味しています。モノの生産に機械が導入される前、すべては「手作り」でした。そこでは、「モノの生産者=職人」という等式が成り立ちました。しかし、技術が発展…

『ご用命とあらば、ゆりかごからお墓まで』 - デパート外商部の「驚き」! 

「デパートを扱った作品」の第二弾は、「顧客のためにはどんな要望でも受けたまわる」という外商の活躍を描いた真梨幸子『ご用命とあらば、ゆりかごから墓場まで』(幻冬舎文庫、2020年)です。万両百貨店外商部のトップセールス・大塚佐恵子や営業成績ナン…

『ごちそうは残業のあとで』 - デパ地下食品フロアの活性化を図れ!

コンビニ、スーパーマーケット、デパート、アウトレット、専門店など、一口に「小売業」と言っても、内実は非常に多様です。いまなら、どの業態のお店でも普段着で買い物を楽しむことができます。ただ、私のような年代になると、デパートで買い物をするとき…

『社長室の冬』 - 日本新報の外資への売却交渉の中で

「堂場瞬一の『メディア三部作』」の第三弾は、『社長室の冬』(集英社、2016年)です。日本新報の社長室に異動した南康祐。取材とはまったく関係のない部署に移ってまだニケ月目。仕事にはなじめていません。ところが、同社の外資への売却話が進むなか、推…

『蛮政の秋』 - 一通のメールからあぶり出される「政治家の闇」

「堂場瞬一の『メディ三部作』」の第二弾は、『蛮政の秋』(集英社文庫、2018年)です。東京本社社会部で働くようになった新聞記者・南康祐と野党・政友党の国会議員・富永卓生。両者のもとに届いた、「50人もの政治家に対するIT企業による現金のばらまき疑…

『警察回りの夏』 - 「誤報」から始まる「メディア三部作」

スポーツ小説や警察小説の分野で数々のヒット作を出している堂場瞬一。そんな作者が若き新聞記者・南康祐を主人公にして、時代の荒波に揉まれて揺れ動いている新聞社が直面している課題・難題に真っ正面から挑んだ作品を上梓されています。『警察(サツ)回…

『空飛ぶ広報室』 - 航空自衛隊を広く知ってもらうには

「自衛隊を扱った作品」の第四弾は、有川浩『空飛ぶ広報室』(幻冬舎、2012年)です。「スカイ」というタックネームを持ち、精鋭集団ブルーインパルスへの配属を夢みる若き戦闘機パイロット空井大祐二尉。ところが、28歳の時に、不慮の事故で戦闘機のパイロ…

『航空自衛隊副官 玲於奈』 - 著者は、元幹部自衛官で、自らも副官の経験者

「自衛隊を扱った作品」の第三弾は、数多久遠『航空自衛隊副官 玲於奈』(ハルキ文庫、2020年)です。沖縄那覇基地に勤務している斑尾玲於奈二等空尉。彼女に下ったのは、南西航空方面隊司令官付き「副官」の辞令。南西航空方面隊は、日本をざっくり四つのエ…

『試練 護衛艦あおぎり艦長 早乙女碧』 - 女性艦長が発揮したリーダーシップ

「自衛隊を扱った作品」の第二弾は、時武里帆『試練 護衛艦あおぎり艦長 早乙女碧』(新潮文庫、2022年)です。海上自衛隊の早乙女碧二佐(44歳)が護衛艦「あおぎり」の艦長として着任した初日を描いた『護衛艦あおぎり艦長 早乙女碧』の続編。本書では、着…

『約束の海』 - 自衛隊とはなにか? 未完の大作

多くの国民が「自衛隊」を意識するのは、台風や地震などの災害時に出動し、人命の救出、遺体の捜索、がれきの撤去などで高い処理能力が報道されるようなシーンではないでしょうか? しかし、「自衛隊本来の任務は、他国からの安全を脅かす行為を封じるために…

『銀行ガール』 - 地方の人たちに貢献するのが地銀のミッション! 

「銀行を扱った作品」の第五弾は、須崎正太郎『銀行ガール 人口六千人の田舎町で、毎日営業やってます』(一迅社、メゾン文庫、2019年)です。地方銀行である神山銀行の光瀬町支店で営業として働いている五十嵐吟子24歳の日々が描写されています。義理人情と…

『アキラとあきら』 - ふたりの「出会い」から「共闘」へ

「銀行を扱った作品」の第四弾は、池井戸潤『アキラとあきら』(徳間文庫、2017年)です。零細工場経営者の息子である山崎瑛(あきら)と大手海運会社・東海郵船経営者の御曹司である階堂彬(あきら)。生まれも育ちもまったく異なるふたり。お互いに運命を…

『オレたち花のバブル組』 - 失ってしまった銀行員のプライドをとり戻せ! 

「銀行を扱った作品」の第三弾は、池井戸潤『オレたち花のバブル組』(文春文庫、2010年)。1988年から92年に就職した「バブル入行組」の「特別な思い・屈託」と、「団塊の世代」に対する怒り・悪戦苦闘を描いた半沢直樹シリーズの第二弾。いったん失われて…

『監査役 野崎修平』 - 銀行の悪弊に挑む監査役

「銀行を扱った作品」の第二弾は、横幕智裕(原作:周良貨、能田茂)『監査役 野崎修平』(集英社文庫、2018年)です。「銀行は晴れの日にムリヤリ傘を貸し、雨が降ったら取り上げる」という言葉通り、「貸し剥がし」や「貸し渋り」は、銀行の姿勢を厳しく批…

『異端王道』 - 「これまでの銀行になかったサービス」を! 

経済小説の対象となる業界で、非常に多く取り上げられているのが銀行です。それは、経済活動のなかで、きわめて重要な地位を占めています。当然の結果かもしれません。もっとも、バブル崩壊後の銀行は、企業や個人にとって「頼りがいがある」存在だとは言え…

『シンデレラ・ティース』 - 歯科医院に持ち込まれる悩みの数々

「クリニックを扱った作品」の第三弾は、坂木司『シンデレラ・ティース』(光文社文庫、2009年)です。「小さい頃から、歯医者なんて大っ嫌いだった」。「キーンと耳ざわりなドリルの音! 私は今でもあの音を聞くと、右の奥歯がつきんと痛むような気がする」…

『カナリヤは眠れない』 - 身体の悲鳴を聞き分け、治療に当たる整体師

「クリニックを扱った作品」の第二弾は、近藤史恵『カナリヤは眠れない』(祥伝社文庫、2020年)です。「本人に治す気がなけりゃ、おれのできることなんてほんの少しや」と言うのは、合田接骨院の合田力。それに対し、「患者さんを治す気にさせるのも先生の…