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『ロボジョ!』 - 知財ビジネスの基本! 

「知的財産を扱った作品」の第二弾は、稲穂健市『ロボジョ! 杉本麻衣のパテント・ウォーズ』(楽工社、2020年)です。大学生の主人公が開発したロボットやそれに搭載する技術の開発状況、その活用方法、成果物をめぐる争奪戦が描写。巻末に「知的財産権 入門コラム」が収録されており、入門的な知識を得ることができます。弁理士の業務を描いたお仕事小説でもあります。

 

[おもしろさ] なぜ、どのようにして特許を出願するのか? 

この本の最大の魅力は、①なぜ特許を出願するべきなのか、②どのような段取りで特許を出願するのか、③「特許に抵触したら、損害賠償を請求するぞ」という警告書を受け取った場合、どのように対処し、戦えばよいのかといったことがやさしく解説されている点にほかなりません。と同時に、「人型ロボット」の楽天則や「ライオン型ロボット」のベラリオンのように、さまざまな機能を有した精巧なロボットが登場することにも興味がそそられます。

 

[あらすじ] 他社の模倣ばかりしている悪徳パクリ企業! 

杉本製作所という町工場の経営者を祖父に持つ杉本麻衣。横山大学工学部に入学、直後にロボット研究会を創設。1年もたたないうちに、「自動調理器による調理の前後工程を自動化したコンパクトな拡張ユニットを製作」して、「お手伝いロボット選手権」で優勝。その活躍ぶりから「ロボジョ」と呼ばれるようになります。二年連続の優勝を狙う麻衣は、第二回大会の出し物を「冷蔵庫から適切な食材を探し出し、それらを自動調理器に運んで投入するという「食材移動ロボット」(「ベラリオン」という名のライオン型ロボット)に決めていました。そのため、三島裕、八木百合、池田次郎、本田義男などの「ロボ研」のメンバーとともに、ロボットに搭載する画期的な技術(食材認識技術RIKOやロボットの腕と手の駆動技術STEPなど)の開発を試み、見事に成功させます。そして、弁理士の鈴木光太郎のサポートを得ながら、RIKOとSTEPの特許出願をめざします。ところが、彼らの活動を妨害しようとする不審な人物が現れます。さらに、他社の模倣ばかりしている悪徳「パクリ企業=ゴロテック」が「損害賠償を請求するぞ」という警告書をテコに戦いを挑んでくることに……。