経済小説イチケンブログ

経済小説案内人が切り開く経済小説の世界

作品紹介-6年目

『農村ガール!』 - 東京育ちの新米女性社員、ハンターになる! 

「農村を扱った作品」の第二弾は、上野遊『農村ガール!』(メディアワークス文庫、2018年)です。レストランに食材を供給するという大手企業「月見食品」。同社にあこがれ、就職できたことで、大喜びした大神 華。ところが、赴任先は秋田の山奥にある営業所…

『経済特区自由村』 - 自給自足のコミュニティーをつくれるのか? 

人口の少子化と高齢化が急ピッチで進んでいる日本。その影響が最も顕著にあらわれている領域に、農村があります。そこでは、担い手不足、耕作放棄地の急増、限界集落の増加など、深刻な多くの問題が未解決のまま。「小規模性、低生産性、低収益性」といった…

『蔦屋』 - 江戸時代に新企画の発掘に挑み続けた出版人

「はじめて物語」の第三弾は、谷津矢車『蔦屋』(学研パブリッシング、2014年)です。今年のNHK大河ドラマは、『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』。横浜流星さん演じる主人公・蔦屋重三郎は、江戸時代の出版人。芸術家・作家の才能を発掘した「プロデューサー」…

『菓商 小説 森永太一郎』 - 「日本初の洋菓子製造」に挑む

「はじめて物語」の第二弾は、若山三郎『菓商 小説 森永太一郎』(徳間文庫、1997年)。エンゼルマークで知られている森永製菓。その創業者で、「キャラメル王」と称された森永太一郎の一代記。艱難辛苦の連続だった彼の生涯、後世に伝えられるべきさまざま…

『黄金の刻 小説 服部金太郎』 - 「国産初の腕時計」に挑む

新年あけましておめでとうございます。あなたにとって、2025年が良い一年になることを願いながら、おもしろい経済小説・お仕事小説の紹介を続けていければと思っています。今年もまた、午前9時から午後5時までは、「仕事+趣味」の時間と位置づけ、なにかを…

『町工場からの宣戦布告』 - メインバンクや親会社との戦いの中で

「下請け企業を扱った作品」の第五弾は、北沢 栄『町工場からの宣戦布告』(産学社2013年)。モノづくりの集積地である東大阪市が舞台。小さな電機部品メーカー「ダイア産業」(従業員70名)を営んでいる湊京太。創業50周年の節目の年、親会社やメインバンク…

『下町ロケット ゴースト』 - モノづくりを極めたい。挑戦する経営者の夢と現実

「下請け企業を扱った作品」の第四弾は、池井戸潤『下町ロケット ゴースト』(小学館、2018年)。ずば抜けた開発力・技術力を有した中堅企業だと、下請け企業に関する一般的にイメージ-「親会社の言いなりになり、常に弱い立場に置かれてしまう」-とは異な…

『空洞産業』 - 産業の空洞化に抗する下請け企業経営者の苦悩

「下請け企業を扱った作品」の第三弾は、江波戸哲夫『空洞産業』(徳間文庫、1998年)。1985年のプラザ合意以降、急速な円高が進み、人件費が高騰しました。そうした環境変化に対応するために、多くの日本企業は、海外で現地企業を創設したり、部品調達を海…

『系列』 - 「運命共同体」か、それとも親会社の「景気調整弁」か? 

「下請け企業を扱った作品」の第二弾は、清水一行『系列』(集英社文庫、1995年)。日本の自動車メーカーはいわば「組立メーカー」。傘下に多くの下請け企業を抱えています。そうしたピラミッド型の組織のなかで、自動車メーカーは、下請け企業の株を20%以…

『湖底の光芒』 - 親会社の無理難題と下請け企業の怨念

製造業では従業員300人以下、サービス業であれば、従業員100人以下の企業は、中小企業と定められています。『中小企業白書』(2024年版)によると、国内の中小企業(336万4891社)で企業総数の99.7%、従業者数(3309万8442人)では全体の69.7%を占めています…

『ヤッさん』 - 築地市場と料理店を結ぶ「食の達人」はホームレス

「築地市場を扱った作品」の第二弾は、原宏一『ヤッさん』(双葉文庫、2012年)。主人公のヤッさんは、築地市場と料理店を行き来し、料亭でもホテルでも厚遇される不思議なホームレス。築地と料亭・レストラン・ホテルなどの料理人を結びつける優れたコーデ…

『築地魚河岸三代目』 - 仲卸の経営者になるはずの男は、魚のど素人

「東京で、美味しい魚を売っている市場はどこにあるのか」と尋ねられたら、多くの人は「築地」、2018年以降だと「豊洲」と答えるのではないでしょうか! 生鮮食料品を扱っている東京中央卸売市場「日本の台所」の一角を構成し、魚市場としての役割を果たして…

『集団左遷』 - 「無能」の烙印を押された50人のリストラ予備軍の奮闘

「左遷・降格を扱った作品」の第四弾は、江波戸哲夫『集団左遷』(祥伝社ノン・ポシェット、1995年)。バブル崩壊後の不況期、到底達成できない目標を課すことで、50名もの社員を解雇することを目的に、三有不動産の副社長が創設した「首都圏特販部」。本部…

『左遷社員池田リーダーになる』 - 「古き良き」企業文化を有する中堅メーカーの命運

「左遷・降格を扱った作品」の第三弾は、鈴木孝博『左遷社員池田リーダーになる』(リーブル出版、2016年)。ドレッシングやソースの製造・販売を手掛ける中堅メーカー「フリージア」の中堅社員である池田俊一が主人公。社員の意見をよく反映させ、一丸とな…

『偉大なる敗北者たち』 - ビジネススクールの研修生が描いた「天国と地獄」

「左遷・降格を扱った作品」の第二弾は、タマヤ学校VIP4・第5班、田山敏雄・監修『偉大なる敗北者たち』(経済界、2006年)。横浜の本社から大阪支社への配置転換のあと、今度は左遷の憂き目に会う森島英司30歳。彼は、逆境を克服するだけではなく、さらには…

『左遷』 - 中間管理職の悲哀が浮き彫りに

業績を上げたり、貢献したりする人は、報酬の引き上げや昇格・出世という形で報われる。逆に、大きなミスや失敗で、業績を悪化させた人には、降格や左遷などが待ち受けていることも。どちらも、会社員にとっては、ごく普通の出来事。ところが、一生懸命頑張…

『金庫番の娘』 - 秘書の目線から見た「政界の暗部」と「一抹の希望」

「秘書と政治家を扱った作品」の第二弾は、伊兼源太郎『金庫番の娘』(講談社文庫、2022年)。政権与党である民自党の有力政治家・久富隆一の秘書を父に持つ藤木花織32歳。10年間勤務した大手商社を辞し、久富事務所に転職。当初、政治家の秘書という仕事に…

『笑うマトリョーシカ』 - 政治家と秘書・母親・恋人、記者の奇妙な関係

選挙で当選したとき、大臣になったとき、テレビや雑誌のインタビューを受けたとき、不祥事を起こしたときなど、なにかと世間から注目される政治家たち。他方、彼らを支える秘書たちに、輝かしいスポットライトが当てられることはほとんどないと言えるでしょ…

『定年就活』 - 定年退職した女性の就職活動

「定年を扱った作品」の第三弾は、堀川アサコ『定年就活 働きものがゆく』(角川文庫、2022年)。40年間の会社員生活を終えて定年退職した花村妙子60歳。働かないと落ち着かない。でも働きを見つけるのは大変なこと。働きがいのある職場、正社員のポスト、仕…

『定年漂流』 - それぞれにユニークな「15の定年風景」

「定年を扱った作品」の第二弾は、西田小夜子『定年漂流』(小学館文庫、2005年)。定年をどのように迎えるのか、当事者たちの葛藤はいかなるものなのか? 「会社」という鎧をはぎ取られて、心もとなき日常に直面することになった男性たちの心の内(ワクワク…

『定年待合室』 - 定年風景はいろいろ

自営でない限り、働いている人のほとんどが経験する定年。「十分働いたので、あとは悠々自適で過ごしたいと考えている人」がおられることでしょう。逆に「まだまだ働きたいと考えている人」もおられるのではないでしょうか。しかし、定年退職する人の大半に…

『ボディガード 二ノ宮舜』 - ボディガードの奥深い世界

「警備会社を扱った作品」の第二弾は、渡辺容子『ボディガード 二ノ宮舜』(講談社文庫、2015年)。スルガ警備保障に勤務する二ノ宮舜26歳。依頼主の身の安全を守るために死力を尽くすBG(ボディガード)の仕事と心の内が描写されています。『左手に告げるな…

『左手に告げるなかれ』 - スーパーで万引きを取り締まる保安士

警備業務従事者のうち、最も身近な人はというと、車で走行しているときにしばしば出くわす交通誘導員でしょうか。ドラマや映画でよく登場するのが、身辺警護に携わる「ボディガード」。ほかにも、イベントや施設など指定場所での巡回警備など、依頼主の「安…

『無限大経営』 - 中小企業経営者の夢と現実

「起業を扱った作品」の第三弾は、杉田望『無限大経営』(幻冬舎、2011年)。三回も裏切りに会い、倒産の危機に瀕するものの、再起を図り、飛躍を遂げてきた実業家・菱木貞夫。彼の半生を描いたドキュメンタリー小説です。モデルは、「染めQテクノロジィ」(…

『鈴木さんの成功。』 - ごく普通の会社員が起業に挑む

「起業を扱った作品」の第二弾は、星渉『鈴木さんの成功。会社員から起業した時に待ち受ける「真実」の話をしよう。』(マネジメント社、2016年)。自動車販売営業マン歴7年の鈴木将吾。メンターとなる神田進次郎と出会い、彼に導かれて会社を興し、いろいろ…

『もしONE PIECEファンの女子大生が起業したら』 - 大学のサークルを会社にする! 

帝国データバンクの「新設法人」調査によると、2023年に全国で新設された企業は、2024年4月時点で15万2860社(前年比7.9%増)。過去最多となっています。起業する人が増えている反面、廃業する人もまた、年々増加。起業10年後の生存率は約26%と言われてい…

『リスタート!』 - 東京オリンピックと五人の「職業婦人」

「東京オリンピック1964を扱った作品」の第三弾は、伊多波碧『リスタート! あのオリンピックからはじまったわたしの一歩』(出版芸術社、2019年)です。専業主婦が当たり前で、会社などで働く女性は「職業婦人」と呼ばれていた時代。オリンピックをきっかけ…

『オリンピックの身代金』 - オリンピックを人質にして爆弾を仕掛けたワケ

「東京オリンピック1964を扱った作品」の第二弾は、奥田英朗『オリンピックの身代金』(上下巻、角川文庫、2008年)です。1964年10月、アジア初のオリンピックが東京で開催されました。それには、単に国際的なスポーツの祭典を日本で行うという以上の重みが…

『祖国へ、熱き心を』 - フレッド・和田勇と東京オリンピック

2024年7月26日開会式から8月11日閉会式の日程で開催されるパリオリンピック。その後、8月28日~9月8日にはパラリンピックが行われます。出場するアスリートたちやその関係者にとっては、待ちに待った瞬間が近づいています。前回の第32回大会は、2020年に東京…

『リコール』 - 隠そうとする経営陣 VS暴こうとする女性エンジニア

「自動車メーカーを扱った作品」の第四弾は、保坂祐希『リコール』(ポプラ文庫、2020年)。AI(人工知能)が未来社会を大きく変えていくと予想されている昨今、自動車のあり方もまた大きく変わっていくことでしょう。「ステアリングもアクセルペダルもブレ…