経済小説イチケンブログ

経済小説案内人が切り開く経済小説の世界

作品紹介-2年目

『動く不動産』 - 「土地転がし」や「地上げ」 が流行語になる

「バブルの時代を扱った作品」の第三弾は、姉小路祐『動く不動産』(角川文庫、1998年)。土地の価格が鰻登りに上昇し、「土地転がし」という言葉が流行したバブル期。では、そうした地価高騰がどのように実現されていったのでしょうか? それには、それを推…

『バブルの帝王』 - グローバルに展開されたリゾート開発

「バブルの時代を扱った作品」の第二弾は、門間 明『バブルの帝王』(飛鳥新社、2007年)。イ・アイ・イ・インターナショナルの社長として、バブル期には「南海のリゾート王」と称され、総資産1兆円を超える企業グループを構築した高橋治則を連想させる人物…

『一瞬の寵児』 - バブルに踊らされたある人物の生き様

新型コロナウイルスで揺れた2020年。株価も値動きの激しい一年でした。12月30日に最後の取引を終えた東京証券取引所。日経平均の終値は2万7444円17銭(前日比123円98銭安)でした。年末の株価としては、1989年の3万8915円以来の高値となりました。史上最高値…

『ともにがんばりましょう』 - あなたが労働組合の執行部員になるときに

「労働組合を扱った作品」の第三弾は、塩田武士『ともにがんばりましょう』(講談社、2012年)。組合活動には、まったく関心がなかった新聞記者が労働組合の教育宣伝部長に就任。そのときの経験が具体的に描写されています。笑って熱くなれる! 組合の最前線…

『青空』 - すさまじいパワハラに苛まれた人の「最後の砦」

「労働組合を扱った作品」の第二弾は、井上文夫『青空』(新日本出版社、2016年)。上司たちのすさまじい「いじめ」や「パワハラ」に苦しみながらも、懸命に働き続けようとする、契約制客室乗務員の能見葉月。そんな彼女に「助け舟」を出したのは、圧倒的多…

『労働貴族』 - 労働組合を牛耳った権力者が会社の経営を歪める! 

多くの企業において、労働者の雇用・権利を守り、労働条件の改善のために活動する組織として、労働組合があります。産業や職種などで組織される欧米型の労働組合とは異なり、日本では、メインとなるのは企業別労働組合です。そして、企業レベルでは対応でき…

『DREAMER ドリーマー』 - 宝塚歌劇団の登場

「はじめて物語を扱った作品」の第三弾は、宮徹『DREAMER ドリーマー~阪急・宝塚を創り、日本に夢の花を咲かせた男~』(WAVE出版、2014年)。阪急・宝塚を創り、阪急東宝グループの創設者として知られている小林一三の生涯を描いた作品です。宝塚の創設は…

『カラオケを発明した男』 - カラオケの登場

「はじめて物語を扱った作品」の第二弾は、大下英治『カラオケを発明した男』(河出書房新社、2005年)です。いまでは、非常に多くの人にとって最も大好きな趣味・娯楽になっているカラオケ。国内のみならず、世界中の人々にも深く愛されています。そのカラ…

『外食王の飢え』 - ファミレスの登場

新しいモノやサービスが初めて登場するとき、世の中の人はどのような反応をしてきたのでしょうか? 非常に多くの人たちの反応は、けっしてポジティブなものとは言えませんでした。端的に言えば、反対するか、もしくは無視するかのどちらかだったのです。新し…

『実録 頭取交替』 - 銀行を私物化。相談役の老害ぶり

「頭取を扱った作品」の第三弾は、浜崎裕治『実録 頭取交替』(講談社、2014年)。ある地方銀行を舞台に繰り広げられる熾烈な権力抗争が描かれています。著者は、山口銀行で新宿支店長、大阪支店長、北九州支店長、取締役宇部支店長などを歴任した人物。 [お…

『[小説] 銀行頭取』 - 地方銀行の改革をめざしたトップの踏ん張り

「頭取を扱った作品」の第二弾は、橋口収『[小説] 銀行頭取』(経済界、2005年)。地方銀行の頭取に「天下り」した人物が、リーダーシップをとって行内改革に奮闘します。著者は、大蔵省の主計局長、国土事務次官、公正取引委員会委員長を経て、1984年に広島…

『頭取の権力』 - 「権力の魔性」にとりつかれる

一般の会社でトップに当たるのが社長。ところが銀行の場合、そのトップは頭取と呼ばれています。それは、明治5(1872)年に制定された国立銀行条例において、銀行の代表者を「頭取」とすると定められたことに端を発しています。字面を見ると、「トップ=頭を…

『ドスコイ警備保障』 - 全社員が元力士という警備会社! 

「警備員を扱った作品」の第二弾は、室積光『ドスコイ警備保障』(小学館文庫、2006年)。もし全社員が元力士という警備会社ができたら、いかなる展開があり得るのでしょうか? なにしろ、立ち合いのスピードはオリンピックの短距離選手並み、体重百キロを軽…

『警備員日記』 - 交通誘導員の世界をリアルに描いた作品! 

クルマを運転していると、道路工事などで片側通行を余儀なくされる場面に出くわすことがよくあります。制服を着て、誘導灯を持った警備員の指示に従って通行していれば、特段、問題が生じるわけではありません。そのため、誘導されている警備員の仕事ぶりに…

『君たちに明日はない』 - 転職によって開花することになる力も

「転職を扱った作品」の第四弾は、垣根涼介『君たちに明日はない』(新潮文庫、2007年)。ここまでに紹介した三つの作品は、いずれも転職が本人の自発的な意思によって行われたケースでした。ところが、本人の意に反して、転職を余儀なくされるケースもない…

『引き抜き屋』 - 転職を演出する「仕掛け人」の世界とは? 

「転職を扱った作品」の第三弾は、雫井脩介『引き抜き屋(1)鹿子小穂の冒険 』(PHP研究所、2018年)。転職を支援することをビジネスにしているのがヘッドハンティング会社。そこで働くヘッドハンターたちの仕事ぶりは、これまであまり知られてはいない「未…

『株式会社ネバーラ北関東支社』 - 「想定外の出来事」から転職を決意

「転職を扱った作品」の第二弾は、滝羽麻子『株式会社ネバーラ北関東支社』(幻冬舎文庫、2011年)。30歳目前で「想定外の事実」にうろたえ、パニックになった弥生。転職を決意し、東京を離れ、北関東のある都市で働き始めるなかで、徐々に自分自身をとり戻…

『40 翼ふたたび』 - 転職によって初めて感じる「人生の醍醐味」

高度成長期(1955~73年)にあって、年功序列、企業別労働組合とともに、「日本的経営」の「三大特徴」のひとつとされたのが「終身雇用制度」。新入社員として入った会社で定年まで働くというその制度。完全になくなったわけではないものの、すでに大きく変…

『老後マネー戦略家族!』 - 老後資金:目標は3000万円? 

「老後資金を扱った作品」の第二弾は、松村美香『老後マネー戦略家族!』(中公文庫、2017年)。「夫婦が90歳まで生きるとすると、必要な金額は、年金を除けば3000万円」。そういう情報をもとに始まった、ある中流家庭のマネー戦略=「資金ゲット」作戦が描…

『老後の資金がありません』 - 「2000万円が必要」と言われているが

最近よく聞くようになった「人生100年時代」という言葉。背景にあるのは、高齢化の進展です。総務省の推計によると、2020年9月15日現在における「65歳以上の高齢者」の人口は、前年より30万人増えて3617万人と過去最多になっています。総人口に占める高齢者…

『鉄の楽園』 - 高速鉄道の受注競争に打ち勝つためには、何が必要なのか? 

「鉄道業を扱った作品」の第四弾は、楡周平『鉄の楽園』(新潮社、2019年)。高速鉄道の国際入札で勝利を収めた台湾。ところが、その後の海外における受注競争で、成功したのはインドだけ。ほかの国々では、莫大な資金力をバックに「なんでもありの手段を駆…

『路(ルウ)』 - 新幹線が初めて海を渡った! 

「鉄道業を扱った作品」の第三弾は、吉田修一『路(ルウ)』(文春文庫、2015年)。日本を代表する総合技術で、高速鉄道技術の世界語にもなった「新幹線」が初めて海を渡ったのは台湾です。台湾への「新幹線の輸出」を素材にした本書では、台北と高雄間を結…

『東京ダンジョン』 - 地下には、メトロを軸にした迷宮のような世界が

「鉄道業を扱った作品」の第二弾は、福田和代『東京ダンジョン』(PHP研究所、2013年)。東京の地下には、地下鉄を軸に、地下道やトンネル、ビルの地下街、共同溝、下水道からさらには首都圏外郭放水路という巨大な地下神殿のような構造物などが、まるで迷宮…

『D列車でいこう』 - ローカル鉄道を活性化させる手立てとは? 

コロナ禍に伴う利用数の激減で、業績の低迷に悩まされている鉄道業。しかし、鉄道は国民にとっては欠くことのできない重要なインフラです。いまも、多くの鉄道会社では、駅ナカの充実、駅のリニューアル、駅周辺の再開発、新駅の整備、収益構造の多角化、次…

『メゾン刻の湯』 - まろやかな極上の文章に綴られて

「個人商店を扱った作品」の第四弾は、小野美由紀『メゾン刻の湯』(ポプラ社、2018年)。東京・下町にある明治43年創業の昔ながらの薪で湯を沸かす銭湯「刻の湯」が舞台。銭湯でのお仕事内容、業界が抱える苦境、刻の湯で暮らしている「訳ありさん」たちの…

『まほろ駅前多田便利軒』 - 対照的な二人の人物が織りなす一つの物語

「個人商店を扱った作品」の第三弾は、三浦しをん『まほろ駅前多田便利軒』(文春文庫、2009年)。便利屋というお仕事の本質と苦楽が描かれています。庭にある猫の死骸を片づけてほしい。外れてしまった押し入れのつっかえ棒を取り付けてほしい。夜逃げした…

『開ける男』 - 鍵屋に持ち込まれる多様な依頼と難題

「個人商店を扱った作品」の第二弾は、本田久作『開ける男 鍵屋・圭介の解けない日常』(ポプラ文庫、2018年)。鍵屋の仕事は、開かない錠を開けること。深夜の依頼も多く、ヤバイ仕事の依頼もまれではありません。鍵屋に持ち込まれるさまざまな依頼と難題に…

『家電の神様』 - 「街の電器屋さん」の生き残る道が提示! 

日本各地で商店街の多くがいま、危機に陥っています。「シャッター通り」になっているところも例外ではありません。衰退を促した最大の理由は、大型のショッピングセンターとの競争激化にあると考えられています。見方を変えれば、商店街とは「道路に沿って…

『舟を編む』 - 浮き彫りになっていく辞書作りの本質と奥深さ

「編集者を扱った作品」の第四弾は、三浦しをん『舟を編む』(光文社、2011年)。辞書作りの大変さと奥深さを描いた作品です。「辞書は、言葉の海を渡る舟」。辞書づくりは、「海を渡るにふさわしい舟を編む」という作業。2013年4月13日に公開された、石井裕…

『小説王』 - 互いの力を信じ合う作家と編集者が紡ぎ出すもの

「編集者を扱った作品」の第三弾は、早見和真『小説王』(小学館、2016年)。文芸という世界が「負のループ」の渦中にあるなか、小説の本質と、作家・編集者のそれぞれの役割を真っ正面から考察した作品です。小学校の同級生であった「売れない作家」と「二…