経済小説イチケンブログ

経済小説案内人が切り開く経済小説の世界

作品紹介-1年目

『北海タイムス物語』 - 毎日決まった時間に読者に届ける-新聞人の誇り

朝起きて、真っ先にやること。それはその日の新聞に目を通すことです。いつも感心されられるのは、自宅で居ながらにして膨大な量の情報を得られること、そしてそれを可能にしている新聞づくりの仕組み・システムです。そうしたサービスを提供してくれる新聞…

『天涯の船』- 「松方コレクション」を創り上げた男女の数奇な運命

「絵画を扱った作品」の第五弾は、玉岡かおる『天涯の船』(上下巻、新潮文庫、2006年)です。浮世絵約8000点、西洋美術約3000点から構成される「松方コレクション」は、神戸の川崎造船所(現川崎重工)の初代社長で、莫大な富を築き上げた松方幸次郎が大正…

『ギャラリスト』 - 画商の使命は「芸術家の人生を創っていくことなり」

「絵画を扱った作品」の第四弾は、里見蘭『ギャラリスト』(中央公論新社、2015年)。日本の美術界の状況や画商の神髄を浮き彫りにした作品です。本書が刊行された頃の日本における純資産百万ドル以上の富裕層の人口は、アメリカに次いで世界第二位。しかし…

『冷静と情熱のあいだ』 - 忘れられない人が心の中に住み続けている

「絵画を扱った作品」の第三弾は、辻仁成『冷静と情熱のあいだBlu』(角川文庫、2001年)。ルネッサンス発祥の地であるイタリアの古都・フィレンツェ。近代的なビルが一切存在せず、まるで街全体が美術館のようです。そんな街を主舞台に、修復士の順正と、あ…

『写楽 閉じた国の幻』 - 「写楽探し」の常識を根底から覆す大胆な仮説

「絵画を扱った作品」の第二弾は、島田荘司『写楽 閉じた国の幻』(上下巻、新潮文庫、2013年)です。江戸時代に生まれた絵師・浮世絵師と言えば、葛飾北斎、歌川広重、喜多川歌麿、東洲斎写楽などの名前が浮かび上がります。そのなかで、写楽は、生没年不詳…

『楽園のカンヴァス』 - 真作か? 贋作か? 17年間の時空を超えた恋の行方! 

9月17日から10月1日まで、「食欲の秋」に因み、料理・食を扱った作品を5つ紹介しました。「食欲の秋」の次は、「芸術の秋」です。そこで、美術・絵画にまつわる作品を紹介していきます。経済小説を素材に「絵画を扱った作品」を解説するとなると、どのような…

『食堂かたつむり』 - 「食べられるもの」に対する「感謝」を込めた料理

「料理を扱った作品」の第五弾は、小川糸『食堂かたつむり』(ポプラ文庫、2010年)。10年間の都会での生活から山あいのふるさとに舞い戻った倫子がオープンさせた食堂の名は「かたつむり」。「食べられるもの」に対する「感謝」の念が込められた料理が提供…

『甘い罠 小説糖質制限食』 - 糖質が過剰に摂取される食生活に喝を入れる! 

「料理を扱った作品」の第四弾は、鏑木蓮『甘い罠 小説糖質制限食』(東洋経済新報社、2013年)。糖質制限食や化学調味料への過度の依存という切り口で、日本人が直面している食生活や味覚の危機と真正面に向き合った作品になっています。 [おもしろさ] 人類…

『星をつける女』 - 格付け判定をするには、これほどまでの労苦が

「料理を扱った作品」の第三弾は、原宏一『星をつける女』(角川文庫、2019年)。世界的な「食のガイドブック」の元格付け人で、シングルマザーの牧村紗英は、飲食店の格付け事務所を立ち上げます。けっして手を抜かずに仕事をやり遂げる優秀な格付け人・紗…

『鴨川食堂』 - 探します! 「思い出というスパイス」付きの料理と味を

「料理を扱った作品」の第二弾は、柏井壽『鴨川食堂』(小学館、2013年)です。京都にある鴨川食堂は、おいしい料理を出すだけではありません。一緒に食べた人についての大切な「思い出というスパイス」の効いた料理・味を探し出してくれる「探偵事務所」も…

『キッチンコロシアム』 - 料理をエンタテインメントとして初めて扱った! 

まだまだ暑さが残っているとはいえ、首都圏では、吹く風に秋の気配が強く感じられる今日このごろです。そして、秋と言えば、「食欲の秋」。おいしいものがいっぱい出回ります。そこで、今回は、料理・食を扱った作品を5つ紹介したいと思います。 「料理を扱…

『東京カジノパラダイス』 - ビジネスの視点からカジノを見ると

「カジノを扱った作品」の第二弾は、楡周平『東京カジノパラダイス』(新潮文庫、2018年)です。カジノをあくまでビジネスの視点で見るとどのようなものになるのかを追求した作品です。原題は、2016年に新潮社から刊行された『ラストフロンティア』。先進国…

『バラ色の未来』 - IRの効果を総合的、かつ冷静に考えてみよう

9月4日、国土交通省は、カジノを含む「統合型リゾート(IR)」整備についての基本方針案を公表しました。IRに関しては、8月22日に、横浜市がその誘致を発表。ほかにも、大阪府・市、和歌山県、長崎県などもIR誘致の申請を検討しています。政府の方針によれば…

『声のお仕事』 - アニメや声優が好きな人にはたまらないお仕事小説

「俳優を扱った作品」の第四弾は、川端裕人『声のお仕事』(文藝春秋、2016年)です。人気があり、身近に感じてはいるが、知らないことの多い声優の世界を描いたお仕事小説。アニメファンの目には、まさに「アイドル」である声優の核心に迫ります。 [おもし…

『カンパニー』 - 世界的なダンサーが作り出す「異次元の世界」

「俳優を扱った作品」の第三弾は、伊吹有喜『カンパニー』(新潮社、2017年)。カンパニーとは、バレエ団のこと。職場で自分の存在価値を見失いそうになっている二人の人物を通して、バレエの魅力とダンサーの心の内が描かれています。 [おもしろさ] 踊れな…

『男役』 - 宝塚の男役になるために必要なことは? 

「俳優を扱った作品」の第二弾は、中山可穂『男役』(角川書店、2015年)。宝塚歌劇団とタカラジェンヌをモデルにした、中山可穂版「オペラ座の怪人」ともいうべき作品です。同じ著者の手による姉妹版として、『娘役』が刊行されています。 [おもしろさ] 男…

『俳優・亀岡拓次』 - 端役という名の名優

8月末とはいえ、まだまだ暑い日が続いています。でも、たとえ厳しい暑さのなかでも、非日常的な世界をつくりだし、多くの人々に楽しいひとときを演出してくれる人たち。そうした人たちを最も身近に感じられる仕事に、俳優業があります。そこで今回は、「俳優…

『県庁おもてなし課』 - 行政と観光特使のコラボレーション

「地域の活性化を扱った作品」の第四弾は、有川浩『県庁おもてなし課』(角川書店、2011年)です。観光立県をめざす高知県を舞台に展開される新設された「おもてなし課」の職員たちと、観光特使に任命された地元出身の若手作家の奮闘ぶりを描いた作品。2013…

『ローカル線で行こう!』 - 鉄道を軸にした「地域の再生」

「地域の活性化を扱った作品」の第三弾は、真保裕一『ローカル線で行こう!』(講談社、2013年)。メインストーリーは、新たに社長に就任した女性が破産寸前のローカル線を再生するという話。しかし、その鉄道自体が地域経済の動脈です。そうした動脈を維持…

『プラチナタウン』 - 元商社マンの町長が挑む起死回生の町おこし

「地域の活性化を扱った作品」の第二弾は、楡周平『プラチナタウン』(祥伝社、2008年)。財政破綻寸前の田舎町の町長に就任した元商社マンが、「逆転の発想」で町の再生に挑む物語です。2012年にWOWOWで放映された連続ドラマW『プラチナタウン』の原作本。…

『そうだ、星を売ろう』 - 「コトづくり」を軸にしたビジネスモデルの構築

2019年のお盆休み。8月10日(土)から18日(日)までの9連休になる人も多いようです。期間中、ふるさとに帰省する人がたくさんおられることでしょう。大都市から地方に移動すると、真っ先に目にするのは、人の密度が希薄になることです。事実、多くの地方は…

『車夫』 - 人力車の魅力が120%描かれています

「旅行・観光を扱った作品」の第五弾は、浅草を舞台に、人力車をひく人とそれに乗る人とのほのぼのとした心の交流を描いた、いとうみく『車夫』(2015年)です。観光地ではよく見かける人力車。とりわけ、浅草の人力車の数は、半端ではありません。雷門のす…

『あぽやん』 - 空港でのトラブル解決、お任せください

「旅行・観光を扱った作品」の第四弾は、新野剛志『あぽやん』(文藝春秋、2008年)です。タイトルにある「あぽやん」とは、「あぽ」(APO)=「空港」(Airport)という略語に由来する旅行業界用語。空港で働く旅行会社のスタッフを意味しています。本書は…

『駅物語』 - 「東京駅」の舞台裏をお教えします! 

「旅行・観光を扱った作品」の第三弾は、東京駅をモデルに鉄道・駅で働く人を描いたお仕事小説である朱野帰子『駅物語』(講談社、2013年)。実にたくさんの人々が行きかう巨大なターミナル駅には、無数の物語があるのです。 [おもしろさ] 駅員をはけ口の対…

『ある日、アヒルバス』 - ごく普通のバスガイドの「愛すべきお仕事」

「旅行・観光を扱った作品」の第二弾は、バスガイドの日常的な仕事をユーモアたっぷりに描写した、山本幸久『ある日、アヒルバス』(実業之日本社文庫、2010年)です。観光バスに乗る客に対するバスガイドの心がけや心の動きが浮き彫りにされています。2015…

『ツアコン!』 - 「いつだって、真心こめたおもてなし」の大変さ

7月も下旬になると、夏休みの過ごし方が話題になることが増えてくるのではないでしょうか。旅行の準備はすでに終えている人が多いかもしれません。とはいえ、新聞・雑誌・ネット上は、夏休みやお盆休みを利用した旅行プランの広告で賑わっています。そして、…

『ルーズヴェルト・ゲーム』 - 「8対7という大逆転劇」! 

「企業スポーツを扱った作品」の第二弾は、第一弾と同様に池井戸潤の作品で、『ルーズヴェルト・ゲーム』(講談社、2012年)です。リーマンショックに伴う不況の最中、多くの企業が自社の企業スポーツチームを続々と休廃部するという事態が生じました。この…

『ノーサイド・ゲーム』 - GMはラグビーの素人、でも「経営戦略のプロ」だった

企業が特定のスポーツを支援する理由は、そのスポーツの実力向上、従業員の士気高揚、企業イメージの向上や知名度アップといった広報効果、社会貢献など、多様です。しかし、企業の業績は、企業内外のさまざまな要因によって浮き沈みを伴います。その結果、…

『当確師』 - 当選確率99%を誇ってきた辣腕選挙コンサルタント

「選挙請負人を扱った作品」の第二弾は、真山仁『当確師』(中央公論新社、2015年)です。当選確率99%を誇ってきた辣腕選挙コンサルタントの名前は聖達磨。選挙コンサルタントが選挙期間中に介入してアドバイス料を受け取った瞬間、公職選挙法違反で逮捕さ…

『当選請負人』 - 候補者だけでは戦えないという「無数のワケ」

7月4日、第25回参議院選挙が公示されました。21日の投開票に向けて、激しい選挙戦が行われています。そうした選挙戦でなくてはならない存在になっているお仕事があります。それは、選挙当選請負人、選挙プランナー、選挙コンサルタントなどと称されているも…