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『Bの戦場』 - プランナーは「絶世のブス」! 

「ウェディングプランナーを扱った作品」の第二弾は、ゆきた志旗『Bの戦場 さいたま新都心ブライダル課の攻防』(集英社オレンジ文庫、2016年)です。物心ついた頃からブスだった北條香澄。子どもの頃に参列した従妹の結婚式のすばらしさに感激。しかし、一度も男性とお付き合いをすることなく大学を卒業。それなら、結婚式を演出する側に回ればよいと考えた彼女は、ウェディングプランナーの職に就きます。ブスとはいえ、気立ての良い彼女のプランナーとしての仕事ぶりをコミカルなタッチで描いたお仕事小説です。「Bの戦場」シリーズ(全6巻)の第一作。2019年3月15日に公開された映画『Bの戦場』(主演はガンバレルーヤよしこさん、出演は速水もこみちさん)の原作。

 

[おもしろさ] 傷つきながらも、懸命に振る舞っている心の内

本書のおもしろさは、ブスであることで傷つけられるながらも、プランナーとして懸命に立ち振る舞っている香澄の心の内を描き出している点にあります。「他人から容姿について言われても、冗談みたいにやり過ごして、かわして、自分は平気だ、大したことじゃないって振りをする……。自分がブスなのはわかっていても……、そんなこと気にする小さい女じゃないと思われたい。卑屈で僻みっぽい、心までブスな女だと思われたくない」。「わたしのブスが、誰かを勇気づけることがある。それって結構すごいことだと」思うことも。「でも、ブスに生まれて良かったかもって、思わせてくれる時があるんです。いっぱい痛い思いをさせられるけど、痛いほど削られて、磨かれているような気がするんです。私はダイヤの原石じゃないけど、泥団子でも磨けば光るって、そんなふうに思えることが、あるんです」。

 

[あらすじ] B専の美形課長からのプロポーズ

「絶世のブス」である北條香澄、ルミエ新都心ホテル宴会部婚礼(ブライダル)課のウェディングプランナー。新郎新婦の二人を最高に輝かせ、その後の結婚生活の自信につながるような仕事をするのが、彼女の使命。そんな香澄の上司に当たる久世課長は、絶世の美男子。ある日のこと、香澄は、その久世課長にプロポーズされます。そして、彼は「B専」だと打ち明けられることに。ところが、香澄が好意を寄せているのは、同じホテルに入っている生花店・フラワーショップ森野花壇の武内さんなのです。果たして、彼女の恋の行方は?