作品紹介-4年目
「家事を扱った作品」の第二弾は、鯨統一郎『ただいま家事見習い中-ハウスワーク代行・亜美の日記』(中公文庫、2018年)。家政婦のように一日単位ではなく、一時間単位で家事を請け負う家事代行会社。個人宅と家事代行会社が契約を結ぶので、従業員は会社…
どの家庭でも日常的に行われている家事。内容としては、買物、炊事、掃除、洗濯といったベーシックなものから、家計の管理、育児、家族の健康管理、冠婚葬祭のつきあい、さらには高齢者のケアや資産運用に至るまで、非常に広範囲なものとなっています。かつ…
「発電方式を扱った作品」の第二弾は、地熱発電を素材にした真山仁『マグマ 小説国際エネルギー戦争』(朝日新聞社、2006年)。世界屈指の火山国と称されている日本。地球の内部にあるマグマによって作り出される「地熱貯留=熱水の水溜り」を活用する地熱発…
便利で快適なライフスタイルの基盤のひとつに、安定的な「電力」の供給があります。火力、水力、原子力といった発電方式以外にも、太陽光、風力、水素、アンモニア、バイオマス、地熱、メタンハイドレート(燃える氷)などの開発・実施の状況や可能性につい…
「フレンチ・レストランを扱った作品」の第三弾は、斎藤千輪『ビストロ三軒亭の謎めく晩餐』(角川文庫、2018年)。東京・三軒茶屋にある小さなビストロ。決まったメニューはなく、好みや希望をギャルソンに伝えると、名探偵エルキュール・ポアロが大好きな…
「フレンチ・レストランを扱った作品」の第二弾は、近藤史恵『タルト・タタンの夢』(創元推理文庫、2014年)。下町の片隅にあるフレンチ・レストラン「ビストロ・パ・マル」。家庭料理っぽいメニューが人気。シェフの三舟は、フランスの田舎町で修業してき…
ヨーロッパを代表する料理と言えば、まず浮かぶのはフレンチとイタリアンではないでしょうか。イタリアンについては、本ブログ(2022年5月31日、6月2日、7日)で紹介したことがあります。今度はフレンチ・レストランに注目してみたいと思います。パスタやオ…
「祖業を扱った作品」の第二弾は、城山三郎『臨3311に乘れ』(集英社文庫、1980年)。1948年に馬場勇をはじめとする5人のメンバーで成立した「日本ツーリスト」。「臨3311(サンサンイチイチ)」と呼ばれる修学旅行専用列車を走らせるなど、日本交通公社や日…
2023年、最初に取り上げた作家は、城山三郎でした。彼は、実在した経営者をモデルにした経済小説をたくさん書いています。今回は、そのなかでも「企業の祖業」を扱った作品を二つ紹介したいと思います。ひとつは、信販会社の老舗で最大手の日本信販(1951年…
「経済小説のパイオニアを扱った作品」の第二弾は、黒木亮『兜町(しま)の男 清水一行と日本経済の80年』(毎日新聞出版、2022年)。多くの資料の収集・分析と入念な取材をベースにして、清水の生涯を克明に描き上げたノンフィクション。城山三郎については…
経済小説というジャンルが日本で定着したのは、1970年代後半以降のことです。しかし、それ以前において、経済・企業・ビジネスマン・お金などを扱った小説がまったくなかったのかと言うと、けっしてそうではありません。高度成長期(1955年~73年)になると…
「書店を扱った作品」の第三弾は、山崎ナオコーラ『昼田とハッコウ』(講談社、2013年)。いとこであるとともに、小さい時から一緒に育てられ、25歳になった昼田実と田中白虹(ハッコウ)。ハッコウは、家業である「町の本屋・アロワナ書店」の店長。ただし…
「書店を扱った作品」の第二弾は、早見和真『店長がバカすぎて』(ハルキ文庫、2021年)です。書店を舞台に、「店長・小説家・社長・版元の営業・客」といった、周りの人たちを、皆バカ呼ばわりしながらも、なぜか辞めようともしない女性書店員・谷原京子の…
ネットで本を注文するときは、本のタイトルを検索し、紹介記事を参考にしたうえで、買うかどうかを判断します。関連した本に注意を払うことは、まずありません。便利ではあるものの、買い物をするときのワクワク感はほとんど感じられません。他方、リアルな…
「探偵を扱った作品」の第二弾は、柴田よしき『神の狩人 2031探偵物語』(文藝春秋、2008年)。老人問題、人口減少、整形、自殺、ドラッグなど、現代の「闇」が凝縮された2031年の東京が舞台。20年前に引退した風祭恭平の助けも借りながら、難題に立ち向かう…
ある人物が行方不明。どんな行動をしているのかわからない。そのようなとき、調査を依頼すると、情報を集めてくれる仕事を請け負ってくれる探偵。聞き込み、尾行、張り込みなど、ときには警察官が犯罪者を追い込んでいくのと似通った行為も行います。具体的…
「図書館を扱った作品」の第二弾は、門井慶喜『おさがしの本は』(光文社文庫、2011年)。入職7年目の図書館員和久山隆彦の視点で、N市立図書館が抱える問題点を浮き彫りにした連作短編集。「本探し」を軸にした五つの話を通して、本・図書館・司書のパワー…
「知の宝庫」と言われる図書館。2021年における公共図書館は3316。職員の内訳をみてみると、専任職員9459名、兼任職員1100名、非常勤職員13,629名、臨時職員4068名、委託・派遣14,516名となっています。地方自治体の財政の悪化に伴う人件費削減のあおりで、…
「移動販売を扱った作品」の第二弾は、原宏一『佳代のキッチン』(祥伝社文庫、2013年)。「いかようにも調理します!」 そのような看板を掲げ、持ち込まれた食材で料理を作る佳代の「移動調理屋」=キッチンカー物語。目的は、15年前、中学三年生のときに「…
特定の店舗を持たず、自動車などで商品を販売する「移動販売」。住宅街やオフィス街、駅前、イベント会場といった人がたくさん集まる場所だけではありません。店があまり存在しない地域や、過疎地などでも導入されています。高齢化が進展する日本で増加して…
「監査法人を扱った作品」の第三弾は、杉田望『不正会計』(講談社文庫、2009年)。金融庁による業界再編という指導のもと、中央と青山が合併して設立された中央青山監査法人。その崩壊もまた、金融庁の「意向」と大きく関わっていたようです。同監査法人を…
「監査法人を扱った作品」の第二弾は、細野康弘『小説会計監査』(東洋経済新報社、2007年)。かつて四大監査法人の一角を占めていた中央青山監査法人は、2006年に金融庁より業務停止処分を受けました。著者の細野は、同監査法人に身を置いた公認会計士でし…
難関とされる国家資格の代表例のひとつに、公認会計士があります。会計士は、主に企業の「成績表」である財務諸表が適正に作成されているのかをチェックする役割(=監査業務)を担っています。それによって財務諸表の信頼性が保証され、銀行や投資家の融資…
「弁当屋を扱った作品」の第二弾は、山本甲士『ひなた弁当』(小学館文庫、2017年)です。「自分が調達した食材を使って弁当を作り、路上で販売する」弁当屋の物語。リストラで追い詰められた49歳の男性が、本人も気づいていなかった潜在能力を見出し、たく…
多くの日本人が日常的にお世話になっているお弁当。その原型は、結構古い時代にまでさかのぼることができます。例えば、「幕の内弁当」は、歌舞伎などの幕間に出された弁当に由来しています。また、鉄道駅や列車内で販売される駅弁も、19世紀末には広く知ら…
「バイオハザード(生物災害)を扱った作品」の第三弾は、くろきすがや『感染領域』(宝島社文庫、2018年)です。人為的に作られた謎のウイルスによって引き起こされたトマトの異変から始まり、全植物の絶滅につながりかねない事件の顛末を描いたバイオサス…
「バイオハザード(生物災害)を扱った作品」の第二弾は、安生正『レッドリスト 絶滅進化論』(幻冬舎文庫、2020年)。ウイルスではなく、高等な哺乳類の急激な進化により、人類が絶滅の危機に直面するというバイオハザードが描かれています。レッドリストと…
バイオハザード(生物災害)。ウイルスや細菌といった病原微生物や寄生虫などが原因となり、人間の生命や健康、さらには農業・畜産業にも影響を与える災害のことです。非意図的または偶発的に起こった事故(実験室や病院内から外部への漏出)と意図的に引き…
「企業買収を扱った作品」の第三弾は、額賀澪『弊社は買収されました!』(実業之日本社、2022年)です。なにも事情を知らされず、突如として他社に買収されることとなった石鹸会社の社員たちの不安と期待や、企業買収のデメリットとメリットが浮き彫りにさ…
「企業買収を扱った作品」の第二弾は、牛島信『第三の買収』(幻冬舎、2007年)です。M&A のひとつに、MBO (マネジメント・バイアウト)と呼ばれる手法があります。それは、企業の経営陣が投資ファンドや金融機関から資金を調達し、既存の株主から自社の株…