結婚式は、「幸せ」という言葉を文字通り実感させてくれる大きな「晴れ舞台」。とはいえ、当事者には、気苦労が絶えなくなることもまた、事実です。なぜならば、「式場選び」から始まって、「招待客の選定」、「挙式や披露宴のやり方や内容(料理・花・写真・衣装など)の決定」、「式当日の進行」に至るまで、準備をし、決めていかなければならないことがたくさんあるからです。そんなとき、新郎新婦にアドバイスを行い、式のプランを立案し、関係する各部署の調整を行ってくれるのが、今回のテーマである「ウェディングプランナー」です。彼らの役割や活躍を描いた作品を二つ紹介します。
「ウェディングプランナーを扱った作品」の第一弾は、五十嵐貴久『ウェディングプランナー』(祥伝社文庫、2021年)です。ウェディングプランナーの仕事ぶり・気苦労・喜び、ブライダル業界の現状、準備段階から挙式の日に至るまでの、結婚式というものの一連の流れがクリアに描写されています。結婚式を挙げようとしている人にとっても、大いに参考にできる情報が満載されています。
[おもしろさ] ウェディングプランナーという仕事の真髄
「結婚前三ヶ月の時点で、75%の新婦が陥る」という「マリッジブルー」。「本当に彼でいいのか。彼と結婚して幸せになれるのか。彼の家族とうまくやっていけるのか……」。堰を切ったように湧き上がる不安の数々。それも、理由もなく突然かかるのです。「強いて言えば、漠然とした不安、環境が変わることへの恐怖心、自分の選択あるいは判断に対する不信。そんなことが原因で、特効薬はない」と言われています。顧客のマリッジブルーに対しては、当事者の心に寄り添い、その解消に向けてアドバイスをすることができるウェディングプランナーの草野こより。本書のひとつのおもしろさは、自分が結婚する番を迎えるにあたって、自らもマリッジブルーにかかってしまった彼女が、どのように悩み、対処していくのかという点です。そして、もうひとつのおもしろさは、ウェディングプランナーという仕事の真髄・苦労・喜びに触れることができる点にあります。
[あらすじ] 自らも陥ったマリッジブルーって?
お台場にある中堅ブライダルプロデュース会社「ベストウェディング社」に勤務して9年目の草野こより。約千組の結婚式に立ち会ってきた彼女が30歳を目前にして出会った美容師の遠藤幸雄は、まさに「理想の相手」。ところが、式まであと3ヶ月に迫ったとき、マリッジブルーに陥ってしまいます。「どうしてなのか」。自分でもよくわからず、戸惑うこより。そんなとき、彼女の前に現れたのが、かつて結婚を意識するようになったものの、料理の修業でフランスに渡ってしまったことで別れてしまった、元カレの徳井孝司シェフでした。