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『タクジョ!』 - 頑張れ! 新人女性ドライバー

かつてタクシーの運転手といえば、ほぼ間違いなく男性でした。ところが昨今、運転手の人手不足や高齢化が進むなか、女性や外国人のドライバーを積極的に採用するタクシー会社が増えているようです。運転手になるためには、二種免許(普通免許を取ってから3年たたないと取れない)のほか、東京では地理と法令に関する試験に合格する必要があります。外国人には、ハードルが高いかもしれませんが、今後は、タクシードライバーの世界でも、「ダイバーシティー(多様化)」の流れが確実に進行していくのではないでしょうか。今回は、タクシードライバーを素材にした作品を二つ紹介します。

タクシードライバーを扱った作品」の第一弾は、小野寺史宜『タクジョ!』(実業之日本社文庫、2022年)。大学卒業後、「女性タクシードライバー(タクジョ)」としてのキャリアを歩み始めた高間夏子。女性客が安心してタクシーに乗れるよう、自分が運転手になることを決意。タクシードライバーの業務・客とのやり取り・トラブル・心配事や、女性ドライバーに対する周囲の理解度がよくわかります。

 

[おもしろさ] ドライバーのお仕事あれこれ

本書の特色は、タクシードライバーというお仕事のあれこれに触れられている点にあります。高間夏子が勤務する東央タクシー。営業区域は東京23区と武蔵野市三鷹市、一日に走れる距離は365キロまでと決められています。一日に乗せるのは、おおむね30人強。やり手のドライバーは一日に8万円~9万円も稼ぎますが、夏子の場合は、多くても6万円程度。会社には専用の洗車スタッフはいません。洗車は一時間ほどかけてドライバー自身が行います。勤務は隔日(午前8時から翌日の午前4時まで。着替えや点検や戦車などのみなし残業を含めて21時間)。車一台を二人で使用。この業務のメリットとは? 一日おきの勤務は、月に12~13回乗務が基本。当然、休みが多いのです。事情が許せば、何歳になっても働けることも大きな魅力……。特におもしろかったのは、「ナンパ」を試みる男性客、無賃乗車を行う女性客など、いろいろな乗客との臨機応変のやり取り! この本を読み、タクシーに乗ったら、以前とは異なった新たな目線で、ドライバーを見ることができるかもしれません! 

 

[あらすじ] タクジョ・高間夏子の成長譚がスタート! 

4月1日、東央タクシーに入社した高間夏子23歳。本社で社会人としてのマナー研修が2週間。そして、指定された教習所に通い、二種免許を取得。さらに、ホスピタリティ研修や危険予知トレーニング。東京タクシーセンターに出向いての地理試験も。それらを経て東雲営業所に配属先が決まったのが5月の終わり。いよいよデビューです。初日だけは、班長(30歳の女性)が添乗。緊張したものの、「乗り心地がよかったよ。がんばってね」と、乗客からの一言に「ほっと」し、うれしく感じた夏子。タクジョ・高間夏子の成長譚がスタートします!