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『やってられない月曜日』 - 仕事に新鮮味を感じなくなったOLがやる気を取り戻す

経理を扱った作品」の第二弾は、柴田よしき『やってられない月曜日』(新潮社、2007年)。会社に入って何年か経ち、仕事にも慣れてくると、新鮮味がなくなってくるのは、世の常。単調な出来事の繰り返しのなかで、常にモチベーションをもって仕事に接し続けることは必ずしも簡単ではありません。では、マンネリ化の悩みを抱くようになった場合、どのように対処すればよいのでしょうか? 参考になるのが、本音満載の本書です。主人公の高遠寧々は、コネで大手出版社に入社し、経理部に勤務する28歳のOLです。マンネリ克服のカギは、彼女の趣味にあったのです! 

 

[おもしろさ] 会社の模型作りで周りをよく観察し始めると

高遠寧々が、会社でも楽しく仕事するきっかけになったのは、なんと彼女の趣味である模 型づくりでした。それは、会社をそっくりそのまま150分の1の模型にするというでっか いプラン。会社と言っても、けっして小さな会社ではありません。38階建て高層ビルがま るごとひとつの会社になっているからです。しかもワンフロアずつ、ちゃんと中に人が働 いている姿を再現していくものなのです。十年やっても終わるかどうかわからないという とてつもない壮大なプランをスタートさせた寧々。部屋や机の配置やそこで働いている人 をデジカメで撮影していきます。すると、それまでとは違った目で社内を見ていけるよう になり、各人の居場所も見えてきたのです。どういうわけか、だんだん素直になっていく、 やさしくなっていく自分を発見します。「この世も、捨てたもんじゃない。よかった、と思 えることが、けっこうたくさんあるじゃない」と思えるようにも。そして、他人と競争す るのが苦手な寧々にも、ルーチンで延々と繰り返される、経理の仕事に対して手を抜かず、いつもの正確さで対処するのに必要な忍耐力があると気づいたのです。

 

[あらすじ] 「仕事の世界」でも楽しくやりたいと思っているのに

領収書の日付と異なる日付が入った清算書を持参した男性社員に注意をすると、さんざん嫌味を言われた寧々。でも、黙って引っ込む寧々さんではありません。また、簿記検定とか持っていないのに、経理に回されたと、愚痴を言う寧々。それに対して、「もうちょっと気楽に構えたら? 経理って仕事はさ、競争して出世を目指す、ってたぐいのもんでもないんだし」と言ってくれるのは、従姉の墨田翔子。「贅沢言ってんじゃないわよ」「会社はさ、生活を保障してくれるための生活費を稼ぐ場所。そう割り切ればいいんじゃない?」とも。もっとも、不満があり、愚痴を連発するものの、定年までしがみついていたいとは思っているのです。だから上にはさからわない、にらまれないことがモットー。同じコネ入社の百舌鳥弥々は大の仲良しですが、男には無縁。男が欲しいかと問われても、欲しくはないと答えます。恋愛だけがこの世界の楽しみのすべてではないので。そんな彼女には、もう一つの世界がありました。「Nゲージ用の150分の1スケールの住宅模型」を作ってネットで売るという趣味です。その世界では、ちょっとした有名人!確かに住宅模型と向き合っているときは、楽しい世界。でも、「会社にいる時だって、生きた人間でいたい」と願っているのですが、どうしてもそうは思えなかったのです。そんな寧々の仕事・会社に対する思いが大きく変化していく事態が!