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『社長よりも偉いもの』 - 社員のみならず、幹部も会社も成長していく

「経営者のリーダーシップを扱った作品」の第四弾は、西澤亮一『社長よりも偉いもの 新卒に見捨てられた会社の復活物語』(ランダムハウス講談社、2008年)です。「成長していくのは社員だけではない。幹部も会社も、ともに成長していく」。著者は、株式会社ネオキャリアの代表取締役

 

[おもしろさ] 会社の成長とともに変化する課題にどう対応する

小規模な仲間同士で立ち上げた企業も、大きくなっていくにつれて、異なった課題に直面することになります。本書には、組織が拡大していくときの課題を確認し、それをどのようにして克服していくのかを、テクノマスタの創業社長である三宅隆夫と一緒に考えていけるというおもしろさがあります。仕事の忙しさにかまけて、社長が採用のことを人事部長に丸投げし、内定者のフォローや入社後の配属先研修が不充分であったこと。社長がめざしているビジョン(=会社の芯)やクレド(=価値基準・行動指針)がまったく示されておらず、会社のビジョンに合っている人間を採用できなかったこと。そのような課題の明確化と克服方法の提示は、「なにからどのように取り組んでいけばよいのか」を示してくれます。多くの会社にとっても参考になるところ大でしょう! 

 

[あらすじ] 組織の成長を阻む「見えない壁」! 

テクノマスタの三宅社長は、現在の50名体制から、100名、150名と成長していくための最初のステップとして、新卒採用に大きな期待を寄せていました。ところが、「創業8年目にして初の新卒社員を五名採用したものの、そのうちの四名がたてつづけに辞めていってしまった」のです。電話で訪問のアポイントをとるテレアポが苦痛になったことや、取引先でのマナー不足を叱責され、上司に「辞めちまえ!」と言われたことなどが理由でした。テレアポについては、こんなことを「するなんて、一言も聞いてなかったよな」「なんで俺たちがしなきゃいけないわけ?」「押し売りしてるみたいで、やる気が起きないよな」といった反応の新卒社員たち。それに対して、「愚痴ばかり言う」「何を言っても響かない」と、悪いのは新人たちのせいだと言い張る配属先の上司たち。袋小路に陥った三宅。そこで、経営者交流会で知り合ったウェブリックの岩渕克社長に相談すると、「三宅には見えていなかった問題点」「組織の成長を阻む『見えない壁』」が浮かび上がってきたのです。

 

社長よりも偉いもの 新卒に見捨てられた会社の復活物語

社長よりも偉いもの 新卒に見捨てられた会社の復活物語