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書評:楡修平『ヘルメースの審判』

『カドブン』(KADOKAWA文芸WEBマガジン)の「レビュー欄」(2021年1月29日)で、楡修平さんの新刊『ヘルメースの審判』に関するわたしの書評が掲載されました。以下に、その要約を紹介したいと思います。

 

いまや、グローバルな規模で展開されている企業間競争。過去の経験や知識は、もはやそのままの形では通用しない。そうした状況下におかれているにもかかわらず、多くの日本企業にあっては、依然として年功序列が幅を利かせている。立場や意見の違う人は、「自分たちの平穏」を乱す「異物」として扱われて白眼視されている。それでいて、それが問題だとは感じられていない。危機感に欠け、進取の精神に乏しいと言わざるを得ないのだ。そのような旧態依然の悪弊や慣行を抜本的に改革しなければ、組織はやがて危機に直面する。そのとき、どのようなことが起こるのか? それは、誰にもわからない、まさに神のみぞ知る世界だ。審判を下すのは、本書の著者が暗示するように、「ギリシア神話に登場するゼウスの使いで、旅人、商人の守護神」であるヘルメースなのか! 

グローバルな戦いのなかで生き残り、さらに発展させていくために必要な条件とはなにか? そのプランをどのように実現させていけば良いのか? この本の魅力は、企業がグローバル化の過程で必ず通り抜けなければならない道筋をクリアに提示している点である。

最後のどんでん返しに至るまでの熾烈な展開を大いに楽みながら、企業再生の手法がリアルに理解できる好著である。読んで考えてアクションを起こす! そうした展開が待ち望まれていることだろう! 

 

本選びの参考になれば幸いです。

『カドブン』レビュー(2021年1月29日)

kadobun.jp