経済小説イチケンブログ

経済小説案内人が切り開く経済小説の世界

『俺のコンビニ』 - 若き店長の情熱がつくりあげたもの

「コンビニを扱った作品」の第二弾は、峰月皓『俺のコンビニ』(メディアワークス文庫、2010年)。郷里でコンビニの立ち上げに奔走する青年の成長物語。コンビニの店長として、何事にもへこたれず、前向きに進んでいく様子がさわやかに描かれています。続編として、新米の店長と仲間たちを描いた『俺たちのコンビニ』(メディアワークス文庫、2011年)が刊行されています。

 

[おもしろさ] いつも立ち寄るコンビニの裏で、こんなドラマが! 

コンビニを立ち上げるときの苦労や具体的な手順、オーナーと本部との関係などが描かれている本書。それらの描写のなかで、コンビニの若き店長はいったいどのようなことに悩まされるのかが明らかにされていきます。万引き、近隣のライバル店との競争、トラブルを起こしそうな厄介な客の来店、そうしたグループのたまり場化への懸念、どのコンビニチェーンに加盟するのかという問題、加盟費用と改装費を合わせて約2300万円をどのように調達するかという問題、加盟店を担当するスーパーバイザーや本部との調整、アルバイトの募集・採用、彼らに声を出して挨拶したり、客の目を見て話したりすることをどのように習慣づけていくのかという問題、見栄えの良い陳列など。いずれも苦労を強いられるものばかりだったのです。あなたがいつも立ち寄るコンビニも、いろいろな問題・苦労を抱えながら営業しているかもしれませんね。

 

[あらすじ] 東京で見果てた夢を故郷で再び追い求めた青年

東京の大学に通っている4年生の牧水良平は、勤務していた大手コンビニチェーン「リンリン」上山駅前店のオーナー・島崎のもとで、卒業後は雇われ店長になる予定でした。ところが、島崎が倒れてしまいます。本部とのもめ事や過重労働で、不眠に苦しんでいたのです。夢が潰れた良平は、虚無感にさいなまれ、能登半島の背部に位置する郷里の石川県鳳島市に帰るものの、なかなかヤル気が出てきません。実家では母親が牧水商店という小さな店を営んでいました。ある日、寝込んでしまった母親に代わり、店番をしたときに感じたのが、牧水商店の問題点。商品の品揃えが足りない、営業時間が短い、店の間取りが悪い、万引き対策がない……。そうした問題を一挙に解決できる手段は、コンビニへの転換。向かいに市営駐車場があるし、観光客がやってくる朝市にも近いという好条件を考慮して、良平は、「俺のコンビニ」を開くことを決意。島崎を追い込み、店を奪ったリンリンが鳳島に出店してくることで闘争心を掻き立てられます。そして、北陸の地場チェーンである「ぷらっとマート」に加盟。地元の問題児とも取れそうな高校生などを店員に採用して、開店に備えようと努めるものの、数々の試練が待ち受けていたのです。

 

俺のコンビニ (メディアワークス文庫)

俺のコンビニ (メディアワークス文庫)

  • 作者:峰月 皓
  • 発売日: 2010/08/25
  • メディア: 文庫