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『校閲ガール』 - 不本意な職場を余儀なくされたけれど

「働く女性を扱った作品」の第五弾は、出版社の校閲部に勤務する女性社員を扱った宮木あや子校閲ガール』(KADOKAWA、2014年)。憧れていたポジションとは異なり、まったくオシャレとは言い難い不本意な部署で働くことになった女子社員の労苦と嘆きが描かれています。2016年10月~12月に日本テレビ系で放映されたドラマ『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』(主演は石原さとみさん)および1017年9月20日に放映されたドラマスペシャル『地味にスゴイ!DX(デラックス)校閲ガール・河野悦子』の原作。『校閲ガール・シリーズ』第1作目。

 

[おもしろさ] 「完璧な仕事」を追求するという姿勢と覚悟

本書の最大の魅力は、なんといっても校閲という地味ではあるが、非常に大切な仕事の内容に触れることができる点にあります。原稿の文章上の不備や正誤を確かめたり、正したりする校閲という作業は、時として、書き手が文章に盛り込もうとした思いをより精緻なものに補強してくれるのです。また、この本には、もうひとつの魅力が備わっています。それは、たとえ自分の希望とはかけ離れた部署やとてもおもしろいとは思えない部署に配属された場合であっても、仕事と向き合える心構えを気づかせてくれる点です。「いい加減な仕事はしない」「完璧な仕事」を追求するという姿勢を持ち続けるという「覚悟」覚悟さえあれば、働くことの喜びを見出せる! そのようなことを教えてくれる作品なのです。

 

[あらすじ] 憧れた入社したのに、配属先は! 

ファッション雑誌にあこがれていた河野悦子は、気合と根性だけで難関の試験を乗り越え、総合出版社の景凡社に新卒入社。が、配属されたのは校閲部。しかも、「エロミステリー」という大変苦手なジャンルの小説にも関わることを余儀なくされます。早くファッション雑誌の編集部に異動したいという願望を胸に秘めながらも、懸命に業務と格闘する悦子。校正のためのゲラを読み、「設定や表現がおかしい」「間違い・不備の可能性がある」箇所には、遠慮なく鉛筆を入れて指摘をし、付箋を貼って注意を喚起していきます。めざすは、「完璧な仕事」。ある日のこと、本郷大作という名の作家の小説のなかで主人公の移動時間がおかしいことに気づき、その点を指摘。担当する編集者からは、「おまえは黙って鉛筆入れてりゃいいんだよ」と叱責される悦子。ところが、事態は予想外の展開に……。