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『オレたち花のバブル組』 - 失ってしまった銀行員のプライドをとり戻せ! 

「銀行を扱った作品」の第三弾は、池井戸潤『オレたち花のバブル組』(文春文庫、2010年)。1988年から92年に就職した「バブル入行組」の「特別な思い・屈託」と、「団塊の世代」に対する怒り・悪戦苦闘を描いた半沢直樹シリーズの第二弾。いったん失われてしまった銀行員としてのプライドを取り戻そうという半沢たちの姿を浮き彫りにした作品でもあります。同シリーズを原作として、2013年7月7日~9月22日に放映された、TBS系「日曜劇場」のドラマ『半沢直樹』(主演は堺雅人さん、出演は上戸彩さん)が制作されています。

 

[おもしろさ] バブルを引き起こした「団塊の世代」との対抗軸

半沢直樹と同期入社の渡真利忍は言います。「オレたちバブル入行組は、ずっと経済のトンネルの中を走行してきた地下鉄組なんだ。だけどそれはオレたちのせいじゃない。バブル時代、見境のないイケイケドンドンの経営戦略で銀行を迷走させた奴ら-いわゆる“団塊の世代”の奴らにそもそも原因がある。学生時代は、全共闘だ革命だとほざきながら、結局資本主義に屈して会社に入った途端、考えることをやめちまった腰抜けどもよ。奴らのアホな戦略のせいで銀行は不況の長いトンネルにすっぽりと入っちまったっていうのに、ろくに責任もとらないどころか、ぬけぬけと巨額の退職金なんかもらいやがる。オレたちはポストも出世も奪われていまだ汲々としたままだっていうのにな……。もしここで銀行から追い出されてみろ。オレたちは結局報われないままじゃないか。オレたちバブル入行組は団塊の尻拭い世代じゃない。いまだ銀行にのさばって、派閥意識丸出しの莫迦もいるんだぜ。そいつらをぎゃふんといわせてやろうぜ。オレたちの手で本当の銀行経営を取り戻すんだ」。また、物語を締めくくる最後の言葉も印象的です。「人生は一度しかない。たとえどんな理由で組織に振り回されようと、人生は一度しかない。ふて腐れているだけ、時間の無駄だ。前を見よう。歩き出せ。どこかに解決策はあるはずだ。それを信じて進む。それが、人生だ」。そこには、バブル世代に対する真っ当な批判のみならず、銀行のあるべき未来に対する思いが込められています。

 

[あらすじ] 半沢に対する妨害も、半沢の反撃も半端ではない! 

ある日、東京中央銀行営業第二部次長の半沢直樹のもとに、やっかいな案件が持ち込まれます。それは、200億円の融資を実行したばかりであるにもかかわらず、運用の失敗で120億円の損失を出すことが決定的となった伊勢島ホテルの件です。具体的には、同ホテルの再建計画を策定し、近々予定されている金融庁の調査を乗り切れというものでした。もし検査で、業績が悪化した伊勢島ホテルへの融資に回収懸念があると判断されたら、数千億円単位の引当金を積まなければならず、業績が一気に悪化してしまいます。そうなれば、中野渡頭取の進退問題にまで発展するのは避けられません。しかも、金融庁検査の主任検査官は、AFJ銀行を検査妨害で告発し、同行を破たんに追いやった悪名高い黒崎駿一です。奮闘する半沢。しかし、硬直した銀行や企業の組織のなかで自らの保身ばかりを考え、いつしかミッションを見失った人たちの妨害や反撃も熾烈です。半沢は窮地に……。内にも外にも敵がひしめく四面楚歌のなか、彼は、渡真利の協力を得ながら、巧妙に仕組まれた不正の構図を暴いていきます。

 

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