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『図書館ホスピタル』 - 自分の仕事を好きになることで発見できる働きがい! 

「新入社員を応援する作品」の第三弾は、三萩せんや『図書館ホスピタル』(河出書房新社、2016年)です。図書館に就職したばかりの女性スタッフが、日常的な仕事を通して、本の魅力を発見し、働きがいを見出していきます。本書を読まれるあなたも、「図書館」を「あなたの職場」に置き換えてみては! 

 

[おもしろさ] 「本って、すごいのかも」という気づきが! 

本の魅力の一つに、悩みを解消もしくは軽減してくれるという役割があるのでないでしょうか? この本のなかでも、「本って、人の悩みを解決することがあるんだよね」「まるで薬のようだ」といった言葉が登場します。「図書館という職場が扱っているもの=本」の魅力を知ったことで、そこで働く人としてやるべきことをはっきりと認識できるようになっていきます。「本って、すごいのかも」という気づきこそが、図書館スタッフの働きがいの発見につながったのです。ところで、この本には、「お悩み相談室」の話が出てきます。多数の本を所蔵している図書館には、そのような本の魅力をより鮮明にするような部署があってもよいのではないでしょうか。本の魅力・効用を軸にした図書館の魅力づくりにむけてのひとつの可能性を示唆した作品でもあるのです。

 

[あらすじ] 悩みを抱えてやってくる利用者に元気を届ける

就活百連敗を経て、元気だけが取り柄の元木悦子が就職したのは、埼玉県にあるちょっと不思議な「しろはね図書館」。27年ほど前にあった白羽病院の跡地に作られた、その図書館には、「お悩み相談室」があり、スタッフの一人が「それぞれの悩み」に合った本を薦めてくれます。そして、彼女自身も、悩みを抱えてやってくる利用者に元気を届けるスタッフとして成長していきます。それを促したのは、利用者とのやり取りのなかで、「役に立てている」「元気にできる」という実感を持てたことにほかなりません。彼女が本来持っていた「元気」という特性が周囲の人にも伝わっていった結果と言えるでしょう。

 

図書館ホスピタル

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