「遊園地・娯楽施設を扱った作品」の第二弾として、東京ディズニーランドをモデルにした作品をもうひとつ紹介します。松岡圭祐『ミッキーマウスの憂欝』(新潮文庫、2008年)です。そこでアルバイトをすることになった青年の目を通して、「職場としてのディズニーランド」が描かれています。来園者をもてなすために、どのように工夫を凝らしているのか、どういった考え方でもてなそうと思っているのかという観点で書かれています。それは、ゲスト(客)として見るディズニーランドとは大違いの世界なのです。
[おもしろさ] そこは、夢の世界ではない。会社なのだ!
物事には、なんでもオモテとウラがあります。ウラである「キャストの世界」とは、いかなるものなのでしょうか? けっして、「暗黒の世界」というわけではありません。一口で言いますと、そこは、「学校でもなければ、夢の国でもない。会社だ」ということになります。アルバイト(準社員)は、ランドとシーを合わせて全部で1万人。しかし、正社員の準社員に対する偏見はかなりのもの。現場では、マニュアル通りのことしか要求されません。そこは、「夢から醒めきった人間たちの集まる世界、夢は見るものではなく、与えるものだと割りきることのできた人々の集う裏舞台」なのです。裏方の役割と誇りが浮き彫りにされていきます。では、ゲストに喜んでもらうために、「楽しませる役割を懸命に演じている」キャストはどのようなことをしているのでしょうか? そうした疑問に答えてくれるのが本書なのです。
[あらすじ] あこがれの世界でアルバイトをすることに
21歳の後藤大輔は、幼い頃からのあこがれの場所である東京ディズニーランドでアルバイトをすることになりました。外から見ると、まさに「光の世界」。「こんな夢の舞台で働くのって、どんなに楽しいだろう」って思っていたのですが、いったん内に入ると、外からは見えない「影の世界」があったのです。でも、ちょっとしたことから、大輔はディズニーランドの危機を救うことに!