「農業を扱った作品」の第三弾は、瀧羽麻子『女神のサラダ』(光文社、2020年)です。全国各地の多様な農家が舞台。さまざまな悩みを抱えることで「迷子になった女性たち」が、農業との関わりのなかで、生への指針と希望を見出していきます。八つの短編小説…
「農業を扱った作品」の第二弾は、甘沢林檎『農業男子とマドモアゼル』(富士見L文庫、2017年)です。農業についての知識は皆無、関心さえなかった都会育ちの女性が、長野県の田舎で農業に携わることに。恋心を抱くようになる、実直で面倒見の良い地元の青年…
広い耕地を大型の農業機械で耕作する欧米型の大農法。他方、日本農業を特徴づけてきたのは、狭い耕地に比較的多くの労働力と化学肥料を使う集約農業でした。しかし、既存の農業・農村はいまや、さまざまな点で曲がり角に立たされています。農業人口の激減だ…
「印刷所を扱った作品」の第二弾は、ほしお さなえ『活版印刷三日月堂 星たちの栞』(ポプラ文庫、2016年)です。川越の町にある古い印刷所・三日月堂が舞台。「扉を開けると向かい側にすぐ活字の棚。壁は四方すべて活字のはいった棚で覆われている。鴨居の…
街を歩くと、目に飛び込んでくる、色とりどりの多様なポスター。毎日、世の中の動きを克明に伝えてくれる新聞。そこに挟みこまれた生活情報満載のチラシ。日常生活に潤いを与えてくれる本や雑誌……。それらを支えているのは、印刷に関わるさまざまな技術であ…
「ウェディングプランナーを扱った作品」の第二弾は、ゆきた志旗『Bの戦場 さいたま新都心ブライダル課の攻防』(集英社オレンジ文庫、2016年)です。物心ついた頃からブスだった北條香澄。子どもの頃に参列した従妹の結婚式のすばらしさに感激。しかし、一…
結婚式は、「幸せ」という言葉を文字通り実感させてくれる大きな「晴れ舞台」。とはいえ、当事者には、気苦労が絶えなくなることもまた、事実です。なぜならば、「式場選び」から始まって、「招待客の選定」、「挙式や披露宴のやり方や内容(料理・花・写真…
「すきま仕事を扱った作品」の第三弾は、大山淳子『あずかりやさん』(ポプラ文庫、2015年)です。「明日町こんぺいとう商店街」の西端にある「あずかりや・さとう」。店主は、盲目の若者・桐島透。7歳で視力を失ってからもう20年が経過しています。そんな店…
「すきま仕事を扱った作品」の第二弾は、沢木まひろ『独りの時間をご一緒します』(宝島社文庫、2015年)。報われない日々に疲れ果てていた葉山遊がスカウトされ、「伴い屋」として働き始めます。便利屋業やホスト業とは、似ているようで違うようです。依頼…
大企業などが進出しない非常に小規模な事業は、「隙間産業」あるいは「ニッチ市場」といった言葉で呼ばれています。では、それらのレベルにも届かない、さらに特化したビジネスはあり得ないのでしょうか? もしこんなビジネスがあれば楽しいとか、人のために…
「税金を扱った作品」の第二弾は、橘玲『永遠の旅行者』(上下巻、幻冬舎文庫、2008年)。納税は国民の義務なのですが、唯一の例外は、「永遠の旅行者」(PT)になることです。永遠の旅行者とは、どの国の居住者にもならず、合法的に一切の納税義務から解放…
2月16日。令和4年分所得税等の確定申告の相談および申告書の受付が始まります。多くの人にとって、税金という言葉が最も身近に感じられる時期です。税は、社会に不可欠な公共財の財源。勤労や教育とともに、納税は、国民の三大義務のひとつとされています。…
「渋沢栄一を扱った作品」の第二弾は、城山三郎『雄気堂々』(上下巻、新潮文庫、1972年)。「血洗島の一農夫」でしかなかった渋沢栄一。妻・千代との結婚から彼女の死に至るまでの期間、栄一がどのように考え、行動したのか? 栄一の半生が描かれています。…
いまの一万円札を彩るのは、福沢諭吉の肖像です。ところが、2024年に発行される新一万円札では渋沢栄一(1980~1931年)に代わります。2021年のNHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公。現代日本の経済的な基盤を創り上げた人物として広く知られています。数々…
「家事を扱った作品」の第二弾は、鯨統一郎『ただいま家事見習い中-ハウスワーク代行・亜美の日記』(中公文庫、2018年)。家政婦のように一日単位ではなく、一時間単位で家事を請け負う家事代行会社。個人宅と家事代行会社が契約を結ぶので、従業員は会社…
「経済小説イチケンブログ」を始めて、ちょうど4年が経過しました。この1年間、「作品紹介」の中で取り上げた作品数は103点。取り上げたテーマ数は、以下の通り35となりました。 4周年目の特集テーマ一覧 99 政治家 100 ウラ・ビジネス 101 メガバンク 102 …
どの家庭でも日常的に行われている家事。内容としては、買物、炊事、掃除、洗濯といったベーシックなものから、家計の管理、育児、家族の健康管理、冠婚葬祭のつきあい、さらには高齢者のケアや資産運用に至るまで、非常に広範囲なものとなっています。かつ…
「発電方式を扱った作品」の第二弾は、地熱発電を素材にした真山仁『マグマ 小説国際エネルギー戦争』(朝日新聞社、2006年)。世界屈指の火山国と称されている日本。地球の内部にあるマグマによって作り出される「地熱貯留=熱水の水溜り」を活用する地熱発…
便利で快適なライフスタイルの基盤のひとつに、安定的な「電力」の供給があります。火力、水力、原子力といった発電方式以外にも、太陽光、風力、水素、アンモニア、バイオマス、地熱、メタンハイドレート(燃える氷)などの開発・実施の状況や可能性につい…
「フレンチ・レストランを扱った作品」の第三弾は、斎藤千輪『ビストロ三軒亭の謎めく晩餐』(角川文庫、2018年)。東京・三軒茶屋にある小さなビストロ。決まったメニューはなく、好みや希望をギャルソンに伝えると、名探偵エルキュール・ポアロが大好きな…
「フレンチ・レストランを扱った作品」の第二弾は、近藤史恵『タルト・タタンの夢』(創元推理文庫、2014年)。下町の片隅にあるフレンチ・レストラン「ビストロ・パ・マル」。家庭料理っぽいメニューが人気。シェフの三舟は、フランスの田舎町で修業してき…
ヨーロッパを代表する料理と言えば、まず浮かぶのはフレンチとイタリアンではないでしょうか。イタリアンについては、本ブログ(2022年5月31日、6月2日、7日)で紹介したことがあります。今度はフレンチ・レストランに注目してみたいと思います。パスタやオ…
「祖業を扱った作品」の第二弾は、城山三郎『臨3311に乘れ』(集英社文庫、1980年)。1948年に馬場勇をはじめとする5人のメンバーで成立した「日本ツーリスト」。「臨3311(サンサンイチイチ)」と呼ばれる修学旅行専用列車を走らせるなど、日本交通公社や日…
2023年、最初に取り上げた作家は、城山三郎でした。彼は、実在した経営者をモデルにした経済小説をたくさん書いています。今回は、そのなかでも「企業の祖業」を扱った作品を二つ紹介したいと思います。ひとつは、信販会社の老舗で最大手の日本信販(1951年…
「経済小説のパイオニアを扱った作品」の第二弾は、黒木亮『兜町(しま)の男 清水一行と日本経済の80年』(毎日新聞出版、2022年)。多くの資料の収集・分析と入念な取材をベースにして、清水の生涯を克明に描き上げたノンフィクション。城山三郎については…
経済小説というジャンルが日本で定着したのは、1970年代後半以降のことです。しかし、それ以前において、経済・企業・ビジネスマン・お金などを扱った小説がまったくなかったのかと言うと、けっしてそうではありません。高度成長期(1955年~73年)になると…
「書店を扱った作品」の第三弾は、山崎ナオコーラ『昼田とハッコウ』(講談社、2013年)。いとこであるとともに、小さい時から一緒に育てられ、25歳になった昼田実と田中白虹(ハッコウ)。ハッコウは、家業である「町の本屋・アロワナ書店」の店長。ただし…
「書店を扱った作品」の第二弾は、早見和真『店長がバカすぎて』(ハルキ文庫、2021年)です。書店を舞台に、「店長・小説家・社長・版元の営業・客」といった、周りの人たちを、皆バカ呼ばわりしながらも、なぜか辞めようともしない女性書店員・谷原京子の…
ネットで本を注文するときは、本のタイトルを検索し、紹介記事を参考にしたうえで、買うかどうかを判断します。関連した本に注意を払うことは、まずありません。便利ではあるものの、買い物をするときのワクワク感はほとんど感じられません。他方、リアルな…
「探偵を扱った作品」の第二弾は、柴田よしき『神の狩人 2031探偵物語』(文藝春秋、2008年)。老人問題、人口減少、整形、自殺、ドラッグなど、現代の「闇」が凝縮された2031年の東京が舞台。20年前に引退した風祭恭平の助けも借りながら、難題に立ち向かう…